教育年報1963年(S38)-160/180page

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げますと,今日では住民一人あたり10円以上の図書費を

もつところも多く,また自動車文庫または配本車をもっ

てサービスしているところも増え,職員組織も殆んど県

立図書館に近いところもあります。待遇なども県立図書

館よりずっとよい館も出てまいりました。他府県につい

て申上げすと東北地方では,岩手県(ここも間もなく新

築されますが)を除いて五つの県が,戦後の新しい建物

を擁し,本県よりも遙かに規模の小さい青森県において

は,既に課制をしき,宮城県とともに館長は一等級に格

付されております。関東地方では,どの県も課制をしい

ている現状であり,全国でも,20を越える府県立図書館

が一等級の館長をおく実情であります。このことは,ひ

とえに,社会の進軍に対応できるよう,当局者が図書館

の内外を積極的に改善してきた結果であろうと思料され

ます。

 第二,高度にして多岐にわたる住民の要求に対して,

従来以上に迅速に事務処理ができるために。

 社会は益々スピーディに動いています。図書館だけ

が,ひとり従来のように,スピード感を失っていていい

というものではありません。幸いにして今日では,館長

以下33名(分館の職員を含めますと,45名)の職員がお

り,そのうち15名は図書館法に定められた専門職であり

ます。なが年にわたって専門的業務に従事していますの

で,専門的業務の一部については,館長から課長に内部

委任を行ない,迅速に事務処理のできるものも少なくな

いのであります。住民もまた迅速に処理されることを望

んでおります。

 2 3課を必要とする理由

 第一,図書館業務を分析いたしますと,最少限三つの

側面が大きく浮び出てまいります。その一つ一つの側面

を捉えて課としなければならないようです。

 管理課は,従来の総務係のほかに図書館法第3条に8

項目にわたって示されている図書館奉仕のうち,特に図

書館に関する各種の普及事業を担当しなければなりませ

ん。資料課は,従来整理係と呼ばれてきたものですが,

部屋はもともと二つにわかれ,業務も二つに別れながら

一つのまとまりをもった作業ということができます。年

間6〜7,000冊に及ぶ資料の選択,収集,分類,装備ま

での業務と,本館分館,ブックモビール等で破損した図

書の再生,雑誌,新聞その他を合本して図書への編入

等,前者を収集係というなら後者こそは整理係です。奉

仕課は,従来館内奉仕係と管外奉仕係の二つにわかれて

業務を行なってきたが,これらの係のほかに,県立図書

館としては最も重要な調査相談係を加え,以上の三つの

係が協力して奉仕してまいります。

 第二,他府県の例に徴しても殆んど3課が多いのです。

 九州地方では,どの県も課制をしいておりますが,2

課というのは,佐賀県だけであって,他は全部3課で

す。当県と規模の似ている長野県は4課制をとっていま

すが,当県の現状では4課制はかなり困難のようです。

 第三,定数増は今のところ認められないとすれば,何

とか2課制でやってゆけないか,というくふうをして見

ましたが,2課制は(他県の経験も同じ).かえって混乱

をまねく恐れがあります。三つの大きな側面があって,

その側面を結び合わせることによって「平面」が成りた

ちますが,二つの側面では単に「線」が形成されるだけ

であります。それではどこにどう責任体制をととのえ

て,迅速に事務処理を行なうのか,わからなくなりま

す。たとい人数が少なくとも,3課を設けて,初期の目

的を遂行せねばならないと思います。

 第四,長野県その他の例に見られるように,課長のも

とに当面係長制を設けず(もちろん課長補佐も設定しな

い)そのかわり管理課に主査1,資料課に主年司書1,

奉仕課に主任司書2(館内奉仕1,館外奉仕1)を置き

主査には係長試験に合格したもの,主任司書には経験の

深い司書を当てることにしていただきたい。なお,その

給与格付けについては,上記の者に対してそれぞれ係長

級の待遇措置をお願いします。

 3 課制を急ぐ理由

 第一,現実の面から,1)住民の高度な要求に応じられ

るように,多数の専門職員(図書館法施行規則第2章に'

定められた最底基準)を配置しているが,この人々は他

の機関に転出することなく,なが年にわたって専門的業

務に従事し,実力もあり,年令も相当に高いにもかかわ

らず,昇給昇格等その身分確保が困難な組織機構になっ

ています。2)待遇という点から見ても,係長ではないが

4等級の職員は何人でもいる。といった現状です。こう

いう現実の中でははっきりと課制を設けて,こまかい専

門的業務は館長から課長に内部委任したほうが,遥かに

能率的なのです。

 第二,県立図書館という特殊な使命の面から,1)県立

図書館は六つの分館をもつ,県立の唯一の社会教育施設

であって,「地方教育行政の組織及び運営に関する法

律」を待つまでもなく,市町村図書館のモデルです。2)

県立図書館は県段階における図書館奉仕という面では,

明かに全県下を対象とするものです。この面からいえ

ば,職員の多い少ないという問題を離れて,県事務所や

保健所等と同一には取扱うことのできない性質のもので

す。3)単に県民を対象とするだけでなく,他府県の住民

からも調査または参考のための資料問合せが頻繁に来て

いる実情であり,県立図書館とはいいながら(どの府県

立図書館も同じことですが)サービスの対象は広く,全国

にも及んでおります。4)したがって,県立図書館の職員

は,自館の蔵書を熟知しているほかに,県内にある他館

または民間の貴重な蔵書についても,日頃調査研究して

おいて,必要に応じて,直ちに回答できなければなりま

せん。時代とともに県立図書館の任務が拡大されたもの

であります。


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