教育年報1964年(S39)-111/232page

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 (2) 教育方針

 不自由をなげかず,人に頼らず,障害をのり越えて,

「明るく」,「正しく」,「たくましく」生きるこども

に育てる。

1) 自分の障害を知り,訓練にはげむ人になる。

2) 不自由でもなにごとも自分でする人になる。

3) よく聞き,よく考え,真けんに学ぶ人になる。

4) 簡単なことでも,くふうする人になる。

5) 社会の恩恵に感謝し,すすんで奉仕できる人にな

 る。

6) 人をねたまず,あらそわず,信頼される人になる。

 (3) 指導方針

1) 自己の障害をよく理解させ,自立への強い意欲と態

 度を育てて運動機能の向上につとめる。

2) ひとりひとりの子どもをよくみつめ,能力と障害に

 応じた指導によって,充実した生活力を身につける。

3) 経験領域を拡充し,情操教育を深めて,豊かな人間

 性を養う。

4) 生活の指導やしっけは,きびしく行ない,生活の自

 立をはかる。

5) 集団生活をとおして,社会生活の基本的ルールを習

 得し,社会人としての素地を身につける。

6) 健康および安全に対する習慣や態度を飲いながら心

 身の健全な発達をはかる。

 (3) 学習内容

 普通小,中学校に準ずる教育を行ないながら,あわせ

て肢体の欠陥を補うために必要な教育をすることを目的

としている。

 したがって学習内容は,普通の小,中学校と同じ教科

をはじめ,道徳,特別教育活動,学校行事等であり,教

科書についても現在郡山市内小,中学校と同じものを使

用している。

 特殊な教科として「体育,機能訓練」がある。障害の

程度に応じて,体育のみを行なうもの,あるいは専門医

の処方により専門技術を有する訓練士の指導で,機能の

訓練(主に下肢)職能の訓練(主に上肢)言語の訓練を

行うものがあり,自己の運動機能の障害を正しく理解

し,障害機能の克服に専念する。

 各教科の学習内容で特に配慮する点について述べてみ

ると,

1) 国語

  言語に関する機能の欠陥があるものは,その改善に

 役だつようにする。

  書くことに障害を有する場合は,残存機能を活用す

 るとともに,障害に応じた筆記用具,用紙を用いる。

2) 社会

  視聴覚教材を活用し,実地観察や見学などを行な

 い,社会的経験や見聞を補うようにする。

3) 数量生活に関する経験も乏しく,論理的な思考力も

 おとるものが多いので,親しみ深い生活を教材として

 取り入れ,できるだけ数量生活の拡大を図る。

4) 観察,実験を重視する。

  肢体の障害がひどくても学習が行なえるように,そ

 の方法をくふうする。

5) 音楽,情緒の安定を図るように留意し,児童がすす

 んで学習に参加し,すぐれた音楽を聞く機会も多くし

 て音楽に親しむようにする。また障害に応じた楽器を

 くふうし選択する。

6) 図工(美術) 障害に克服して製作する喜びを味あ

 わせて自信と意欲をもたせ,これを生かそうとする態

 度とあわせて美的情操を養う。

7) 家庭(技術・家庭) 障害に応じて適切な材料,用

 具をくふうして,生活にむすびついた実践的な教材を

 用い,製作,実習などを多く取り入れて家庭および職

 業教育の効果を高める。

 以上,個々の児童,生徒の能力に応じて,できるだけ

個別化学習を行ない,障害を克服してたくましく生きて

いくための生活力をひき出し,発揮させるようにする。

 (4) 入学判定基準

 県内に在住する肢体不自由者で,義務教育をうけるべ

き年令にある者を,次の観点にたって選考し入学を許可

する。

1) 身体

 ア 克服訓練処置を必要とし,且つ訓練により効果を

  期待し得ると認められるもの。

 イ 長期にわたり医学的観察指導を要すると認められ

  るもの。

 ウ その他障害度からみて普通小,中学校での教育が

  困難と考えられるもの。

2) 知能

 ア 教育の対象となり,自己訓練可能な知能度を有

  し,教育効果の期待し得られるもの。

3) 次のものは原則として入学を認めないことにしてい

 る。

 ア 著しい二重以上の障害を有するもの。

 イ 現在進行中の精神疾患,脳疾患,その他内臓疾を

  有し,長期の治療を要するものと認められるもの。

 ウ 現に伝染のおそれのある疾病や性格異常者で,集

  団生活にたえ得ないと認められるもの。

 エ その他集団生活が困難と判断されるもの。


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