教育年報1965年(S40)-191/213page

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  本研究は間接指導の在り方に研究の焦点をすえ、

  プログラム学習の原理からプログラム学習を簡接指

  導にとりいれれば、発達段階や個人差に応ずる指導

  や間接指導と間接指導の組織化から複式学級の学習

  指導の改善が期待できるであろうことを予想し研究

  をすすめた。

(2)研究の経過と方法

 1) 複式学級の学習指導にプログラム学習をとりい

  れるため文献研究とプログラム学習についての効

  果の検証を研究第二年次までに行なった。

  その結果は、

  ア.一斉学習にくらべてプログラム学習が全般的

   に効果が認められた。

  イ.プログラム学習は特に下位の段階にある児童

   の学習に効果が認められた。

  ウ.学習のは握力についても、プログラム学習は

   一斉学習よりもすぐれていることが認められた。

  エ.一斉学習にくらべて特にすぐれていると認め

   られたのは、基本的知識、技術および基本的思

   考操作等の獲得であった。

 2) 以上の結果から、間接指導にプログラム学習を

  導入する仮説をたてた。即ち「基本的知識や技術

  基本的思考操作等を獲得させるねらいをもつ学習

  指導過程を間接指導のおもな内容とし、この間接

  指導にプログラム学習をとりいれれば、児童の発

  達段階や個人差に応じ、個別学習と集団学習を組

  織化することができ、複式学級の学習指導の改善

  が期待できる。」である。

 3) 研究第三年次の本年度は、仮説の検証に研究の

  主眼をおき、二群法により行なった。

  ア.実験群は福島市立山之内小学校とし、プログ

   ラム学習をとりいれた学習指導を行ない

  イ.統制群はK小学校O分校に委嘱し、プログラ

   ム学習の原理をとりいれた学習ノートにより学

   習の個別化、集団化をはかる学習指導を行なっ

   た。

   第1次実験 6月下旬

    社会科

     5年 米と麦   6年 源氏と平氏

    理科

     5年 せっけん水のはたらき

     6年 空気中の水じょうき

   第2次実験 9月下旬

    社会科

     5年 農業のあゆみ

     6年 江戸に幕府のあった時代

    理科

     5年 こん虫のからだ  6年 鉱物

   第3次実験 1月下旬

    社会科

     5年 生産をすすめる商業

     6年 国々の結びつき

    理科

     5年 電磁石  6年 モーター

(3)結果と考察(第3次実験を中心にして)

 1) 統計的検証

    社会科 事後テストの結果
学年   平均 標準偏差 検定
5年 実験群 36.4 8.8
統制群 27.5 7.0
6年 実験群 33.8 7.0
統制群 24.5 6.8

備考

※は5%の危険

率で有意差が認

められる。

(以下各表同じ)

   事前テストでは知能検査で6年で統制群がすぐ

  れていることが検定の結果認められ、5年の知能

  検査、5、6年の学力検査では有意差が認められ

  なかったが、事後テストで実験群がすぐれている

  ことが検定で保証されたことから、プログラム学

  習をとりいれた学習指導に効果があったといえる。

   さらに、個人別に学習指導の効果を両群あわせ

  てT得点に換算し、事前テストと事後テストの1

  標準偏差値1以上で±としてみると下記の通りと

  なる。
学年 実 験 群 統 制 群 検定
+ ± - 平均 + ± - 平均
5年 4 4 0 +8.4 5 4 1 +18.2
6年 6 0 0 +3.2 2 11 0 +3.6

  理 科
学年   児童数 平均 標準偏差 検定
5年 実験群 8 46.0 3.90
統制群 9 39.6 4.29
6年 実験群 5 42.6 4.26
統制群 5 37.2 4.05

   両群の質は、事前テストの知能検査では、5、

  6年ともに有意差が認められず、学力テスト

  (福島県標準学力テスト)では、6年で有意差が認め

  られなかったが5年では実験群がすぐれていた。

  両学年とも、この単元を指導する前の前提テスト

  では、両群に有意差は認められないので、ほぼ同

  質の集団ということができる。事後テストの結果

  実験群がすぐれていることが検定で保証されたこ

  とから社会科と同様プログラム学習をとりいれた

  学習指導に効果があったということがいえる。

   統計的検証では、プログラム学習をとりいれた

  実験群がすぐれていることを認められたが、その要

  因や内容について授業の記録からその概要をのべ

  る。

 2) 授業記録からの考察

  ア.学習結果の確認がおくれると効果がうすい。

    間接指導にプログラム学習をとりいれること

   は、プログラム学習の原理である即時確認(フ

   ィードバック)による強化と直接指導との結び

   つきから学習の効果を期待したからであった。

   問題の提示を系列だて、学習資料を適切に投

   入し、学習方法を具体的に指示した学習ノート

   も、学習結果の確認が即時に行なわれないため、

   その効果がうすれたのは理論的にも予想できる

   ものであった。そのため問題毎にグループ、全

   体での確認の方法はとったものの即時確認は不

   可能であり、それだけ効果がうすかったことが

   うかがわれる。

  イ.学習ノートによる学習は1単位時間がのびが

   ちである


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