教育年報1967年(S42)-170/194page

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(3) 仮     説

 1) 「のぞましい学習指導法の組織化」の実践によって、

  正しい学力観と主体的学習とを成立させ、問題解決の第

  一の糸口とする。

 2) 学習指導と生徒指導(生活指導)の一体化をはかるこ

  とによって、正しい学習観、学力観―人間形成のため

  の―を確立しうると考える。

 3) 学校(小・中学校をとおし)および家庭との価値観の

  一貫性を保持させることによって、問題解決の根本基盤

  を形成しようとする。 (このためには、小・中学校・家

  庭とも、同様な教育標語のごときものを共有する姿態に

  おしすすめたい。)

(4) 本研究における教育的人間観の基礎

 1) Gobriel Mercelの、相互主体性に生きる人間

 2) Otto Friedrich Bollnowの、希望に生きる人間

 3) Viktor,E,FrankIの、意味への意志に生きる人間

  以上三者の統合としての実存的人間観に立つ。(したが

 って従前の実存主義の立場ではない。)

(5) 研究経過の概要

 1) 研究計画

  ア.  年 次 目 標

    3か年の継続研究で、本年度はその第二年次にあた

   る。次のような年次ごとの目標で研究を進めている。

    第1年次(41年度)主として仮説1)に関する研究。

    第2年次(42年度)主として仮説2)に関する研究。

    第3年次(43年度)主として仮説3)に関する研究。

  イ.  実験地域

    3つの仮説を検証するための実験地域ならびに実験

   学校。

    地域 伊達郡伊達町

    学校 伊達町立 伊達中学校

       同    伊達小学校

       同    伏黒小学校

       同    箱崎小学校

 2) 研究経過

   第一年次(41年度)は主として、「望ましい学習指導

  法の組織化」の方法を、実験学校の小学校・中学校をと

  おして適用し、その習熟をはかってきたが、第二年次は、

  次のように研究をすすめた。

  第二年次 (42年度)

  ア.  第 一 学 期

    「望ましい学習指導法の組織化」の方法で、第一年

   次に引きつづき次の教科に適用し授業研究をとおして

   その洗練をはかった。

    伊達中学校 国語・社会・数学・理科・英語

    伊達小学校 社会・理科

    伏黒小学校 算数

    箱崎小学校 国語

    「望ましい学習指導法の組織化」の洗練をはかるに

   あたっては、学習課題・予習的課題の作り方・生かし

   方に研究の焦点をあて、特に次の5項目にめやすをお

   いた。

   (ア) 学習課題、予習的課題の設定が単位時間内(小学

    校45分、中学校50分)に終わるようにつとめる。

   (イ) 「学習のまとめ」の時間を10分とり、児童・生徒

    自身で、学習の結果重要と思われるものを要約させ

    るようにする。そのため教師は、各分節ごとのまと

    めを適切におこなうとともに、まとめのしかたにつ

    いて具体的に指導する。

   (ウ) 学習課題、予習的課題は、児童・生徒とじゅうぶ

    ん話し合ってから設定するようにつとめる。

   (エ) 児童・生徒のノートづくりをより効果的にするた

    め、板書事項を精選して、構造的に板書するように

    する。

   (オ) 予習的課題の発表は、完全解答のものより、問題

    となったところがらとりあげるようにする。

  イ.  第二・三学期

    「学習指導と生徒(生活)指導の機能の一体化」に

   関する研究を授業研究をとおして進めた。なおこれと

   併行して「望ましい学習指導と生徒(生活)指導の機

   能の一体化」の仮説を次の3点に具体化して実践した。

   (ア) 自分のわかるところと、わからないところを明ら

    かにし、不明な点は自分が納得するまで追究する態

    度を育成する。

   (イ) 児童・生徒相互の話し合いの場を設け、各自の意

    見を出しあって、おたがいに協力しあって問題の解

    明に努力する態度を育成する。

   (ウ) 学習の傾性を大切にする。

    ・ 児童・生徒のまちがった発言や、つまずきを大切

     に取り扱う。

    ・ 児童・生徒ひとりひとりに対するはげましのこと

     ばを常に考えておく。

    ・ 指名するにあたって、児童・生徒の特性をじゅう

     ぶん配慮する。

  ウ.  第二年次における授業研究の回数は次のとおりであ

   る。

   (ア) 校 内 研 究

     伊達中学校  理論研究         9回

            授業事前研究、事後研究 16回

     各小学校   理論研究         9回

     授業事前研究、事後研究        14回

   (イ) 小・中学校合同研究

  エ.  中間報告会

    43年2月5・6の両日、教育庁ならびに各教育事務

   所指導主事を対象にして中間報告会を開いた。

    第1日目  研究経過報告

    第2日目  授業観察

    参加人員  78名

 3 学習指導法改善に関する実証的研究

(1) 研究の目的

  科学の急速な発達、社会生活の変化、技術革新の進行な

 どに対処するために、発展的な学力を育てていくことが強

 く求められている。しかし、知識主義的な学力観が教育実

 践の現場を支配しており、昭和31年以降おこなわれた学力

 調査の結果にも、その欠陥があらわれている。


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