教育年報1967年(S42)-179/194page
2 図書の寄贈
本年度の寄贈図書で特筆すべきことは「佐藤文庫」の寄贈
である。「佐藤文庫」については、本年報の36年度版にくわ
しいので省略するが、昭和36年以来委託契約によって保管さ
れ、利用に供されてきたが、委託者である佐藤伝吉翁が昭和
42年暮れ死去され、同文庫のうち戦争関係資料13,378冊が遺
族の手によって昭和43年2月9日に寄贈された。ご遺族の方
々ならびに関係者に深く感謝の意を表したい。なお一般図書
約6,000冊は翁が生前経営されていた東京都中野区にある文
園高等学校に寄贈されることになり、委託契約を解かれ、3
月4日同校に移送された。
その他、個人、官庁等から寄贈されたものとしては、42年
7月10日、福島市史編纂室から統計書類29冊、9月25日、
福島市新町に居住の柴橋まつさんから「世界文学全集」
「大言海」「国訳漢文大成」等183冊が寄贈され、また、12月14日、
県職員研修所から各種統計書、人名録など48冊を管理換えに
よって受入れた。
更に、中央官庁や各種団体からの報告、統計書、民間会社
からの社史、研究、宣伝、紹介物、大学、研究所等から研究
紀要など寄贈される図書類は年々増加し、本年度は図書1,744
冊、新聞77種、雑誌214種に達した。
3 蔵書目録の刊行
民間の会社や工場は勿論、デパート、商店などにおいては、
営業品目のカタログを備え、またチラシなどによってPRに
努めている。図書館における蔵書目録は、いわば営業品目の
カタログであるといえよう。どういう資料がいつ購入された
かわからないようでは十分な図書館活動を行なっているとは
いえないし、急速かつ複雑に進展する現代社会においては、
利用者は常に最新の情報資料を求めてやまない。そうした意
味においても、蔵書目録の刊行は図書館運営上もっとも重要
な意味を持つものであり、速かな刊行が望まれるゆえんであ
る。本館においては昭和30年度以降蔵書目録の刊行に力を注
ぎ、年次計画によって昭和41年度までの間に全蔵書の目録編
纂を終わり、42年度に至ってようやく年刊で発行できる態勢
に入り、42年10月に「増加図書目録」昭和41年度版を刊行し
関係各方面に配布した。
4 整 本 業 務
整本の仕事は、新聞、雑誌などの合本整本と利用のはげし
い自動車文庫、貸出文庫等の図書、館内閲覧用図書の修理など
であるが、本年度処理したのは一般図書1,015冊、新聞合本
340冊、雑誌合本700冊、その他505冊であった。また、県
内の公民館、学校図書館関係者の要請にこたえて、技能員を
派遣して、つぎのところで簡易製本技術の指導にあたった。
簡易製本講習会
期 日 昭和43年1月25日
会 場 喜多方市厚生年金会館ホール
主 催 福島県立図書館、福島県公共図書館協会、
喜多方市公民館
参加者 公民館、学校図書館関係者 30名
第3節 館 内 奉 仕
1 利用状況
(1) 利用者数
総数において変わりはないが、昨年と比べて特に目立つ
ことは、高校生、大学生の館外利用がそれぞれ約45%、30
%のびたことである。これは昨年から推し進められてきた
貸出業務に主力を注いだことのあらわれで、学生生徒の席
借りからいくらかでも前進して図書館本来の利用の仕方が
理解されてきたと考えて、更に資料の積極的利用をはかれ
る体勢に次年度はもっていきたい。→(表1)
月別利用者数は昨年に比べて均衡化して来ているが、4
月、1月は年度はじめ、正月ということで図書館まで足を運べ
ないようである。昨年は館外利用者が1,000人をわった月
が4、8、9、10、1月と5ヵ月もあったのが本年は4、
1月だけとなっている。ただ館外利用者数が伸びたといっ
ても全体の12%程度ということでは、これが日本の図書館
のレベルだとはいっても、これらの増大をはかるために、
利用者がもっと手軽に利用できる体勢にすべき余地はまだ
まだあるので、明年度はこのような点について思い切った
措置を講じたい。→(表2)
(2) 読書傾向 (資料の利用状況)
館外利用冊数がはじめて2万台を越え、5年前の2倍に
なったこと。自然科学部門、雑誌の整本されたものがそれ
ぞれ2倍に伸びたこと等があげられるが、自然科学部門に
ついては、従来収書があまかったことを反省して新しい良
書を収集したこと、雑誌については限られた購入誌数を補
うために寄贈されたものを整理して閲覧に供したことによ
るものと考えられる。要は需要があれば供給するといった
考え方でなく、十分に供給すれば、需要もあるという積極
的姿勢をとるべきことの重要さを示してくれたあらわれと
見たい。→(表3)
(3) 館外利用登録者
総数1,690名は昨年度の1,396名より294名増とはいう
もののまだまだ少ない。また表4のように総数の64%以上
が学生・生徒によって占められているということは、学生
の利用は望ましくないというのではなく、一般人の利用が
まだまだ少ないという点で、単にPRの不足ということだ
けでなく考えなければならない問題が残されているようだ。
今後図書館側からの積極的なPR活動と相まって、手続き
の簡素化、親しみやすい雰囲気づくり等につとめることに
よって、県民の図書館に対する要望を掘りおこし、利用者
の層の拡大を図らねばならないと考える。→(表4)
(4) 館外利用の実態
42年5月に館外利用についての実態を調査してみたが、
表5に示されるように、特に地域別にみてみると総数1,230
人中、実にその88.7%もが図書館を中心とした半径4km以
内に居住している人によって占められているということか
らすれば、地理的にもこの程度が図書館に足を運べる限度
であるから、住民のための図書館ということならば、図書
館の位置、数ということではまだまだ足りないということ