教育年報1969年(S44)-210/241page

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の成果の問題である。現在一般にとられている方法は、各個

それぞれ異なっている能力をもっているものが、学級という

単位集団において行なわれている、この既成学級に弾力性を

もたせ、児童・生徒の経験・能力、内容に即した集団構成に

より、ひとりひとりの継続的進歩をはかるため、複数授業や

合併授業を可能にすることである。

 その3は、技術革新による教育機器の問題である。学習の

成立を強固にするには、刺激の強化とそれに応ずる反応の強

化とが必要になろう。そのため各教師の特質を生かすととも

に、教育機器の導入を容易にした、奉仕授業や交換授業を組

織的に行なうことである。

 その4は、児童・生徒の生活の多様化の問題である。担任教

師の接触性からの許容的な人間関係とともに、多面的な観察・

指導のため、学年、または学年団教師による協力的・組織的

な教育活動を行なうことである。

(3) 実態ならびに意識調査

 1) 小学校における学級担任制

 県下小学校575校について、学級担任制の実態とともに、

その意識を管理的立場、男子・女子教師の立場で各校3名、

1725名を対象とし、下記事項について調査する。

◇ 実態調査

 ア.  完全学級担任制の実施状況

 イ.  ア以外の学校での学年別完全学級担任の実施状況

 ウ.  単元指導計画の共同作成状況

 エ.  専科授業・交換授業・奉仕授業の学年別実施状況

 オ.  合併授業・複数授業の学年別実施状況

 カ.  教科担任制の実施希望状況

◇ 意識調査

 ア.  学級担任制の長所と短所

 イ.  学級担任制の改善についての意識

 ウ.  教科担当についての意識

 エ.  教授組織の改善方式についての意識

 オ.  教科担任制実施についての意識

 2) 中学校における教科担任制

   県下中学校299校について、教科担任制の実態を下記

  事項について調査する。

 ア.  単元指導計画の協力作成の実施状況

 イ.  教科内領域分担授業の実施状況

 ウ.  能力別編成授業の実施状況

 エ.  合併授業の実施状況

 オ.  複数授業の実施状況

 カ.  教授組織の改善に関する意見

(4) 改善しようとする教授組織の内容

 1) 単元指導計画の共同作成

   学校規模に即して、教師グルーピングのパターンをみ

  いだし、教科書等の特質を明確にし、かつ調和と統一の

  ある実践計画を作成する協力体制を整える。

 2) 教授分担の構成

   ティーム・リーダー、ルーム・ティーチャー、シニァー・

  ティーチャーといった立場を構成するため、組織上の視

  点を具体的にとらえ、教師の意識についての問題点を明

  らかにし、特性を生かした分業・協業による協力責任態

  勢をつくり、教授組織としての交換授業・奉仕授業とする。

 3) 弾力的な学習集団の編成

   既成学級の再編成による小集団・合併集団の教育活動

  の傾向をつかみ、個別化・集団化による効率的な授業の

  展開を可能にするための条件を明らかにし、組織的に複

  数授業や合併授業を行なうようにする。

 4) 組織体としての学年

   教育活動の基盤として、学年役割の実態を知り、多面

  的な指導・活動を推進することにより、全人的教育をは

  かるための学年の組織的なありかたを明らかにする。

 2 学習指導法の個別化・集団化の研究

(1) 研究の趣旨

 私たちが直面している問題点の一つに、社会が必要として

いる知識や技能の急速な増大とその質的急上昇にどう対処す

るかということがあげられる。この問題を解決するためには、

教育課程や学習指導法などの面で、いくつかのこころみがな

されてきていることは周知のことである。主題にかかげた

「学習指導法の個別化と集団化の研究」は、私たちがおかれ

ている現実的状況を出発点として、この問題についての一つ

の有効な解決法を探究しようとしているのである。

 研究主題についての上記志向条件は、さらに詳述するなら

ば、次のような理由にもとづいている。

 1) 何を指導すればよいかという指導内容の質は、子ども

  の学力に大きな影響を与えるものであり、それについて

  の吟味と理解はきわめて重要なことである。

   しかし、それらをいかに指導すればよいかという方法

  的な面の解明なしには、その実効性は期待できない。

 2) 学習指導法の個別化と集団化は、学習指導法の基本的

  な機能であり、その効果的な活用法の解明は、上記1)に

  述べた実効性に深いかかわりをもっている。

 3) 学習指導法の個別化は、「学習は個別に成立する」と

  いう原理に立脚し、「学習の個別化は集団化の基礎の上

  でその効力を有効に発揮し得る」という発展的原理を派

  生し、この二つの原理は密接な相互関係を持っている。

 4) 現在の状況では、学級単位の学習指導の中で、ひとり

  ひとりの子どもに学習を成立させるためにはどうするこ

  とがよりよいのかということが、現実的な問題として考

  えられている。

(2) 研 究 内 容

 個別化と集団化の機能は、不可分の相互関係を有するもの

であることは(1)の3)で述べたが、この考えを基本としてそれ

ぞれの機能に付与した特性は次のとおりである。

 1) 学習指導法の個別化とは、ひとりひとりの子どもが、

  主体的に学習に取り組んでいく構えを育成するための機

  能と、ひとりひとりの子どもの学習による認識活動を有

  効にするための機能である。

 2) 学習指導法の集団化とは、ひとりひとりの子どもの学

  習をより効果的に促進し、学習の質的な高まりと量的な

  拡大が効果的に行なわれ、自分だけでなく、みんなで向

  上しようとする構えが持てるように、学習集団に内在す

  る力をいかしていくための機能である。

 知識や技能の急速な増大とそめ質的急上昇に対処するとい

う課題は、射程の長い良質の知識や技能の習得を可能にする


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