教育年報1970年(S45)-230/260page
つくるようにする。
3)技術革新は、教育方法・技術にも必要的に波及し、視
聴覚教育とか、教育機器の導入とか、教育工学とかとい
って取り入れられ、効率的な授業に大きな役割が期待さ
れているが、学習過程に位置づけられた活用、さらには、
定着、発展をはかることについての検討が必要であろう。
そのため組織的な条件整備が考えられよう、その体制と
して、実際授業に教師の協力場面を組織的に設定し、じ
ゅうぶんな機能発揮をはかろうとする。
(2)研究の目的
1) 単元指導計画の共同作成
実際授業のための1時間ごとの教科授業案を単元指導
計画とし、単位学年、あるいは近接学年による学年団で
共同作成することである。そのため学年内での協業、分
業が組織的に可能なるよう配慮するとともに、その作成
が勤務時間内に位置づけられるようにする。
2)教材、発達段階、経験に応じた単位集団の再編成
教科の性質、あるいは教材内容に応じ、児童の発達段
階、経験からみて、既成の学級集団を合わせて大集団に
したり、グループに分けて小集団にしたりすることであ
る。そのためには、単位学年の教師が協力し、生徒指
導が行なわれている体制であるようにする。
3)教師の特性を生かしたチーム・ワーク
効率的な授業とし、かつ教育機器の導入を可能にする
ため、TL、RT、STというような役割で協力し、本
質的な授業を展開しようとすることである。その役割は
固定したものでなく、教材の内容によって、弾力性をも
たせ、機能発揮をはかるようにする。このことは、たぶ
んに経験の少ない教師のグルーピングによる自校研修の
一方式と考えることもできる。
(3)研究の前提条件
1) 教師の体質改善
現在の教育活動は、学級担任教師に一任されている。
教科指導はもちろんのこと。生徒指導全般にわたって、
直接その指導、処置にあたっている。その結果は、程度
の差はあるにしても孤立的・独善的にならざるを得ない、
このようなあり方を改め、学年教師が協力してあたる組
織体制をとることにより、学級の生徒指導の問題につい
ても、対策・指導が学年教師にあるという考え方に改め、
担任教師は、担任学級の子どもについて、分業任務を負
うことにする。
2) 一般的な学習態度
学習時における形式的な態度について、たとえば「ハ
イ」といって答えさせるとか、挙手して答えさせるとか、
各教師が共通理解にたち、授業内容以外のことで、子ど
もに抵抗を与えないようにすることである。そのため学
習一般態度の基本様式とか、発表、話し合いの訓練とか
を一定にし、各教師がじゅうぶんな理解と、子どもに徹
底させるようにする。
(4)研究体制
1)学校経営としての学年団経営
学校の実情と課題に応じ、学年団(低・中・高学年)
を運営の基盤とする。従って学年団構成には、構成員で
すべての教育活動を分業・協業できるようにし、かつ校
務も学年団で担当し、遂行できるようにする。
2) 単元指導計画の共同作成
研究の目標、学校の実態から体育科と理科をとりあげ
ることにする。体育科は、1部内容の合併授業で1年か
ら4年までは、2学級2教師の授業であり、5・6年は
2学級3教師の授業である。理科は、5・6年の1部内
容の複数授業である。これらの単元指導計画は、それぞ
れの学年団で作成しようとする。
3)学級集団の弾力的な配慮と教師の協力
体育科の合併授業は、大集団を主とし、教材の内
容によって、ローテーション学習方式、能力別学習方式、
パートに分けての学習方式、合同学習方式などにより中
集団・小集団として、弾力的な取り扱いをする。
理科の1部複数授業は、1学級2教師の授業で、機器
導入や、小集団編成を可能にするなど、教師の協力と集
団の個別化・集団化により本質にふれた授業を展開しよ
うとする。
(5)結果の考察
実践研究にとりくんで日が浅く、今後の継続研究にまた
なければならないことであるが、教師の意識や態度、児童
の心情の変化などのあらましを次にあげることにする。
1) 教師の意義や態度
ア.基礎的なことが身につくような配慮と、能力に応じ
た指導展開がわかるようになった。
イ.多教師対多児童の接触により、相互の理解が深めら
れた。
ウ.技能など、体育でねらうことについて、学級の格差
がなくなってきている。
エ.児童側からみると、得意なことを他の学級の児童と
ともにできるという、優越感がみられるようになる。
オ.下位同志、上位同志の練習がみられ、よい意味で競
争心がでて、はげみになっているようである。
カ.チームによる学習計画の段階における教材研究につ
いて、より深い話し話いの時間がたりない。
2)児童の意義
ア.2〜3人の先生がそれぞれに分かれて、いろいろな
方法で教えてくれるので、きびしいが力がつくようで
ある。
イ.ふたりの先生にみられるので、なんとなく緊張し、
気をぬくひまがなく、きびしくなった。
ウ.他のクラスの人となじめないし、勉強がむづかしく
なった。
2.福島県診断標準学力検査問題の作成
児童・生徒の学力をより確かなもの、より高いものにする
ためには、まず、児童・生徒の学力の実態を的確には握する
ことが必要である。その学力の実態をとらえるには、日々の
教育実践における教師作成のテストによることはもちろん必
要であるが、県または全国的な視野に立って、習得の程度を
とらえ、かつ、その解釈をすることが必要であり、この広い
視野に立って指導上の問題点を明らかにし、今後の指導に役
立てるようにすることがたいせつである。