教育年報1972年(S47)-270/285page

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 館内児童室に児玉文庫また移動図書館用として互助会文庫

が新設されたが、これは在来児玉細江氏から100万円、

(財)互助会から30万円をそれぞれ図書費として寄附があったため

できたものであり、その一部は県内親子読書活動のための図

書費としてあてられた。

第2節 整理事務

1,図書館資料の収集

(1)一般資料の収集

 資料の収集にあたっては、各部門の参考図書・学術書など

の基本図書を重点的に収集することに努めた。

 最近の出版状況は複刻版・全集もの、豪華本の出版が盛ん

で、全集ものでは文学・思想関係ですぐれた個人全集が相つ

いで出版され、また画集ではあるが1冊60万円という超豪華

本の出現で話題を呼んだ。そうした出版状況を反映して、収

集した資料も必然的に全集・叢書類が多く、全体に占める割

合が高くなり、実用的なもの、娯楽的なものは例年に比し少

なかった。しかし、軽読書室の新設により、生活上の実際に

役立つものとして、趣味・レジャー・衣食住に関する図書

500冊を揃えて公開した。また資料収集の面で特にふれてお

きたいのは「児玉文庫」の設置による児童図書の収集整備で

ある。同文庫は福島市出身で在米の児玉細江氏が教育振興のた

め県に寄金されたものを、関係者のご配慮で図書館資料費と

して活用されることになったものである。本館では児童に対

する図書館奉仕の重要性と、極度に不足している児童図書の

現状にかんがみ最近のすぐれ児童文学を中心として500冊を

収集して、児童室に「児玉文庫」として配置した。

(2)地方行政資料の収集

 県及び市町村から刊行される印刷物は、地方行政資料とし

て図書館資料の基本的な文献群である。地方公共団体がぼう

大なナマ資料に基づいて作成したものだけに、民間や個人で

は作成し得ないし、信愚性が高く、客観的に作成されている

点で、その文献的価値が高いからである。したがって過去・

現在・将来の地域の状況を知ることのできる貴重な資料とし

て、地域住民のこの種資料に寄せる関心は高く、その利用は

年々増大しつつある。そうした現状からその収集と保存につ

いては、図書館運営の重点施策として、関係者のご援助によ

り推進しているが、県関係については庁内各部課のご理解と

ご協力により、ある程度の成果は収めているが、市町村関係

については、収集のためのルートが確立されていないことも

あって困難を極めている。本年度は福島市をはじめ県内10市

に対して直接依頼状を発し、それぞれの市の発行にかかる条

例・規則、市会会議録、予算、決算書、市勢要覧、職員録、

市史、各種報告書、計画書、統計書等の寄贈を依頼した。こ

の結果福島・郡山・白河の各市から当該資料の送付があった。

(3)資料の受贈  

 年間を通じ官公庁・大学・会社その他個人から寄贈される

資料は非常に多く、とくに本年度は県内の個人と同人誌の受

贈が、担当者の精力的な努力にもよるがかなりの数にのぼっ

た。個人の場合は多くは自費出版の形のものが多く、同人誌

は小数の同好のささやかな会費でまかなわれているだけにま

ことに感謝にたえない。しかし個人の場合は拒否されるケー

スもあり、それがまた貴重な資料であるだけに、県内出版物

については予算化を図りすべて買い上げることを是非実現し

たいものである。まとまったものとしては福島市の久米幸夫氏

から一般図書250冊、根本七郎氏から戦前の貴重な気象資

料、林業関係雑誌277冊、その他特種なものとしては、海外

移住事業団の整理統合による福島支部の廃止により、同支部

所蔵の海外移住に関する大量の資料を受贈した。これらの資

料は購入資料の不足を補うとともに、調査研究のための貴重

な資料となっている。

(4)「通教文庫」の設置

 通信教育を実施している大学では、地方在住学生に対する

学習指導とくに学術専門図書の利用により学習に支障をきた

さないよう、全国各地の公共図書館等に「通教文庫」を設置

して効果をあげているが、本館でも昭和41年に中央大学通信教育部

から要請があり、検討の結果、通信教育生に働きなが

ら学ぶ勤労青少年が多いことから、勤労青少年に対する奉仕

活動の一環として、設置を受諾し、「中央大学通教文庫」と,

して、福島市および周辺の学生の便宜に供してきた。その後

46年に至り更に慶応義塾大学から要請があり、大学当局との

協議が成立して「覚え書」を交換「慶応義塾大学通教文庫」

として図書を受託し公開している。中大通教文庫は毎年図書

が補充され充実してきているが、慶大は発足まもないので、

今後の補充が待たれる。

 2.図書館資料の整備     

(1)蔵書の検討

 図書館資料の収集は、一般資料については、司書をもって

構成する収書委員会を定期的に開催し、蔵書構成を勘案しつ

つじゅうぶんなる検討のもとに適書の選定にあたっているが、

蔵書構成の適否は図書館奉仕に大きく影響するので、万全を

期するため、昭和44年度から年次計画により、専門家による

蔵書診断と適書の推せんを依頼している。本年度は日本・

中国・英米・ドイツ・フランス・ロシアなど日本および外国文

学部門について、それぞれ委員を委嘱し、数回にわたって委

員会を開催して、結果報告書の提出を受けた。報告書によっ

て指適された不備な部門については、年次計画により逐次整

備していきたい。

 昭和47年度福島県立図書館図書選定委員名簿

委嘱分野 氏  名  職   名 住     所 備  考
日本文学 鈴木久 福島大学教授 福島市泉熊野16 上代・中古中世
日本文学 渡辺義夫 福島大学助教授 福島市吉倉吉田17の1 近世
日本文学 木村幸雄 福島大学助教授 福島市渡利平ヶ森10 近代・現代
中国文学 大久保隆郎 福島大学助教授 福島市腰浜町1の5  
英米文学 西村嘉太郎 福島大学助教授 福島市森合狐塚畑26の3  
ドイツ文学 佐竹正一 福島大学助教授 福島市渡利八幡町87  
フランス文学 加藤宏幸 福島大学助教授 福島市吉倉吉田17の1  
その他の外国文学 薗部一郎 福島高校教諭 福島市泉白川の23  
児童女学 代田昇 岩崎書店親子読書編集長 東京都練馬区練馬三丁目31  


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