教育年報1975年(S50)-199/303page
文化
第1節 概要
近年、科学・技術の限りない発展が、自然や人間生態系の
調和を乱し、人類の生活を危うくすることが憂慮されてきた。
これとともに、人間文明を支える価値体系としての文化のあ
り方についても、関心が高まっている。
一方、個人の自由と責任が尊重され、真の個の確立が要請
される社会状況のなかで、県民は、精神的な充実と物心の調
和のとれた人間的生活を志向している。
こうした県民の精神的向上や充実に関する希求を、実現す
るための条件を整備することは、社会的要請であるとともに
行政の本来的課題であり、文化行政の占める今日的役割は、
大である。
昭和50年度は、次の5項目を重点として事業を推進した。
1 文化活動諸条件の整備
地域文化振興の核となる指導者に、芸術各部門の実技等の
研修機会を提供し、その資質向上に努めた。また県文化セン
ター(収蔵庫整備)、いわき市文化センター(建設)の施設整
備や、その機能充実に努めた。更に、文化団体や地方文化
施設の行う自主事業を助成し、地方文化の振興に努めた。
2 芸術文化活動の充実
全国5道県で行う国の移動芸術祭派遣公演を初めて本県に
招請し、東北ブロック地元公演とともに、県内6市と、県文
化センター(創立5周年記念事業、委託)で開催、本邦一流
の舞台芸術を県民の鑑賞に供した。これは県民に多大の感銘
を与え、県民文化意識の高揚に効果があった。総合美術展、
選抜秀作展、文学賞は質量とも充実し、いっそうの向上が見
られ、県民の発表、鑑賞の最高の場としてすぐれた実績を残
した。また、こども芸術劇場、青少年芸術劇場及び県文化セ
ンターの親子劇場や演劇教室は、青少年にすぐれた芸術を鑑
賞させる場として定着し、好評を博し、情操涵養への効果が
期待されている。
更に、県芸術祭は、相双地方を中心に県内一円で行われ
とくに主催地全市町村の経費拠出による事業の持ち方、最多
の参加行事とすぐれた内容であったことから、例年になく盛
大となり、各地域文化の振興に多大の成果をもたらした。ま
た、芸術文化のふるさと指定を拡充するとともに、県秀作展
の地方巡回も拡充し、地方文化活動の進展を図った。
とくに、全国一流水準にある本県合唱界の特別編成団体の
訪米演奏事業を助成し、国際文化交流・親善に努め県内文化
団体活動の促進に寄与した。
3 開発に伴う遺跡保証の強化
県土開発に伴う埋蔵文化財の保護については、緊急性を要
するものが多く、開発関係部局とその取り扱いについて協議調
整を図った。また、法改正に応じて事前協議のルール化につ
いて努力した。
更に、必要なものについては開発前に記録保存のための
発掘調査を実施した。
4 指定文化財保護施策の強化
文化財を保護するため指定調査をはじめ、文化財基礎調査
民家緊急調査等を実施し、県内に所在する文化財の実態のは
握に努めた。また昨年に引き続き文化財パトロール事業を実
施し、指定文化財及び遺跡の実態は握と保全に努力した。防
災、環境整備をはしめとする文化財保存事業に対する助成を
充実し、保護の万全に努めた。特に文化財保護法の一部改正
に伴い、県文化財保護条例の一部改正を行い、文化財の保護
の強化を図るとともに市町村文化財保護行政の条件整備の拡
充強化を図るべく指導推進した。
5 文化財普及・活用の推進
情操豊かなふるさとづくりを進めるため、民俗芸能のふる
さと指定をはじめ、文化財研修バスの運行、民俗芸能大会の
開催等、広く県民が直接肌で文化財に接することにより、文
化財に対する理解を深め、愛護思想の高揚を図るための事業
を取り入れ、文化財の普及と活用事業の拡充を図った。
第2節芸術文化
1 文化振興諸条件の整備
(1) 指導者養成
1) 青少年芸術文化リーダーのつどい
ア、主 催 県教育委員会
イ、期 日 会場・参加者等
部門 期 日 会 場 参加者 合唱 7月24日〜26日 国立磐梯青年の家 52 美術 8月1日〜3日 県文化センター・福島高校 81 舞踊 9月5日〜7日 国立磐梯青年の家 55 文学 10月24日〜26日 積 慶 寮 33 演劇 11月22日〜23日 県文化センター 181 ウ、講 師
(ア) 合唱 斎藤一次(福島大学講師)
鎌田昭治(福女高教諭)
(イ) 美術 日本画 安部孫一(日展所属)
油 絵 梅宮英亮(独立美術協会所属)
版 画 福田利秋(集団「版」所属)
彫塑上級 佐野文夫(自由美術協会所属)
初級 菅野忠良(日展所属)
(ウ) 舞踊 長沢トシエ(福島県民踊指導者連絡協議会幹事長)