教育年報1976年(S51)-268/309page
研究成果については、「研究紀要」をもって報告した。
3) 道徳教育に関する研究
学校の教育目標・各学年目標及び指導の重点と道徳教
育目標との一貫性を図り、道徳の授業の充実については
もちろん、学校の全教育活動の中で養う道徳性を、計画
的、発展的に指導するために、道徳教育全体計画の改善
について研究した。
2 教科における学習能力の発達と授業
に関する研究
(1) 研究の視点
この研究は、児童・生徒の学習能力開発の一環として調査
研究したものであり、今年度は第2年次として昨年に引き続
き、児童・生徒の学習能力が授業を進めていく中で、どのよ
うな形成過程をとるかを明らかにし、特に授業そのものの内
面的充実を図り、授業における児童・生徒のつまずきの原因
の究明に当たった。
(2) 研究内容と方法
小学校の3教科(3年生国語・2年生社会・4年生算数)
を対象にして、主として実際の授業の面から、当面の学習に
おいて伸ばしたい能力と、先行経験によって得られた前提能
力の両面を考え、学習活動を通して伸びつつある能力や、伸
びなやんでいる児童・生徒の学習能力の実態や問題点を究明
した。
1) 前提能力と思考のつまずきの解明(国語・社会)
2) 授業場面での思考(筋道を立てて考える能力)の形成
過程(算数)
3) 前提能力調査と研究協力員による実証授業
(3) 研究の概要
1) 国 語 科
読解過程における要点のとらえ方を究明し、児童の思
考のつまずきに対する指導のあり方について、「要点を
は握する能力」の観点から授業を通して追究した。
2) 社 会 科
児童の資料活用能力を育てるために、指導過程の中で
「望ましい資料」「望ましい資料提示の機会」について研
究し、資料活用による児童の反応の変容状況を授業を通
して追究した。
3) 算 数 料
筋道を立てて考えていく能力を、児童の具体的な反応
や、思考のつまずきの面から研究し、能力の形成過程を
五段階学習過程(問題をとらえる・予想を立てる・解決
する・たしかめる・まとめる)によって明らかにするこ
とをねらいとし、「計算のきまりを発見する能力」の観点
から、授業を通して追究した。
3 福島県診断標準学力検査問題の研究
(1) 研究の視点
現在使用されている福島県診断標準学力検査問題と同様
の信頼度と精度をもち、テスト時間二分の一の問題作成の
要望にこたえることと、新教育課程実施による測定領域の
変化に対応するため、福島県診断学力検査問題を作成し、
標準化を図った。
また今年度は、本県における小学校児童の現有学力や、
指導活動の実態をは握して、教育課程や学習指導方法の改
善の基礎資料を得ることをねらいとして、小学校6年終了
時の学力テストを実施した。
(2) 研究内容と方法
1) 福島県診断標準学力検査問題の研究
ア 算数の「数量関係」「図形」「量と測定」について、新
たな観点から所要時間40分の問題を作成し、「数と計算」
の領域の問題について再構成した。(学年は4・5・6
学年、問題作成委員9名を委嘱)
イ 作成した問題の予備テストを実施して、テスト問題
の標準化をすすめた。
2) 福島県診断標準学力検査の実施
小学校第6学年の課程終了時における児童の学習の習
得状況をは握するために、中学校1年生を対象に国語・
社会・数学・理科の4教科で生徒数2,000名を、地域
区分A・B・Cの各層より抽出して実施した。データ
処理にはコンピュータを使用し、教科指導上の手がかり
を究明した。結果は報告書による。
なお、本県の診断標準学力検査の問題について、その
活用の現状を探り効果的活用を図るため、検査問題の信
頼性・妥当性及び診断性について吟味を加え、今後の改
善の方向を検討した。活用の面については今年度の全教
連全国大会(北海道)で発表した。
4 教育相談の基礎的研究
(1) 研究の視点
現代の小学生像とはどのようなものなのか、さらに、その
ような児童にはどのような教育がなされるべきなのかを、
校長、担任教師、父母の立場から多面的にとらえ、今後の小
学校教育に最も適した生徒指導のあり方等について、調査研
究することを目的として実施した。
(2) 調査の方法
1) 調査対象
福島、郡山、会津若松、いわきの4市から、市中心部
の小学校、市内地区の小学校、市周辺地区の小学校を各
1校ずつ抽出し、それらの小学校の1年生から6年生ま
での各1クラス、計72学級の父母2,352名と、クラス担
任72名、校長12名を対象にした。
2) 調査内容
調査は、質問紙法により実施したが、その内容は次の
とおりである。
ア 父母を対象とするアンケート (質問項目21)
イ 担任を対象とするアンケート (記述式)
ウ 校長を対象とするアンケート (記述式)
(3) 集計・分析の考察
1) 共働きの父母が半数近く、母の求職要求が非常に強い。
この傾向は今後も増加するであろう。
2) 父母のしつけが過干渉気味である。
3) 映像文化の影響が強烈である。
4) 塾、習い物に通う子供の数が半数に達し、2つ3つと
重ねて通う者が2割にも達している。