教育年報1977年(S52)-324/357page
の寄贈があった。とくに高橋氏のコレクションは、同氏が
福島県史・文化編の近現代の詩の歩みを執筆されるために
収集されたもので貴重な・資料が多い。特種なものとしては
博向堂書店寄贈による「特高月報」があるが、これは昭和
の初期から敗戦直前までの日本の思想と社会運動について
特高警察が集めた調査資料で、今日では入手が困難な資料
を大量に収録していることで得がたい歴史記録である。
2 図書館資料の整備
(1)蔵書の検討
蔵書構成については、利用者の傾向や出版状況などを踏
まえ、館内で組織されている収書委員会においてしゅうぶ
ん検討を加えている。一方、より適切な蔵書構成を図り、
県民の信託にこたえるために、専門家に委嘱して、年次計
画で進めている蔵書診断は、本年度は工学・工業部門につ
いて実施し整備を図った。
委員は次のとおりである。
白石五郎 県土木部技術管理課主任主査兼技術管理係長
土木工学
木村義光 県立福島工業高校教諭 建築学
加藤稔 〃 機械工学
渡部規 〃 電気工学
佐原四郎 〃 化学工業
高橋キヨ子 福島大学教授 家 事
(2)蔵書目録の刊行
所蔵資料の全県的活用を図るため、毎年刊行しているが
本年度は昭和51年度に受け入れた4,950冊について 増加
図書目録として刊行し、市町村教委公民館、高等学校等
に配布して、資料利用の促進を図った。
(3)資料の受け入れ、整理状況(昭和52.4〜53 3)
区分 購入 寄贈 編入 管理換 計 一般図書 (館内) 3,252冊 2,151冊 129冊 11冊 5,543冊 (館外) 2,500〃 1,082〃 3,582〃 児童図書 (館内) 369冊 140冊 0冊 0冊 509冊 (館外) 5,201〃 726〃 5,927〃 計 (館内) 3,621冊 2,291冊 129冊 11冊 6,052冊 (館外) 7,701〃 1,808〃 9,509〃 合 計 11,322冊 4,099冊 129冊 11冊 15,561冊 第3節館 内 奉 仕
図書館奉仕を評価する場合の指標として、貸し出し冊数が
あり、今日ではすべての図書館が競ってその伸長に努力を傾
けている。しかし 貸し出し冊数の伸長には種々の条件があ
り、それらが整備されなければ、あまり多くは期待できない
が、身近かな問題として、利用者が希望する図書をある程度
そろえることや、貸し出し制限を緩和することなどは、それ
ほど困難な問題ではない。そこで、利用の中心である館外貸
し出しの中で、中高年や主婦に比較的希望の多かった小説部
門の拡充をとくに考慮し、また、貨し出し制限は、今日の全
国的すう勢をふまえて、テストケースとして大幅に緩和する
措置を講じた。更に、最近は家族ぐるみで利用することが多
くなってきたので、利用者の利便と貸し出し事務の合理化の
ために、これまたテストケースとして「家族貸し出し券」の
発行を試み好評を得た。
1 利 用 状 況
利用の中心をなす館外個人貸し出しについてみると、貸
し出し冊数が前年の48,113冊が73,696冊に伸び、また.こ
こ数年4,000人前後で低迷していた貸し出し登録人員は、
ようやく上昇に転じ、5,600人を記録した。前者は前年比
532%、後者は36.6%の増加率である。
利用された図書を分類別に見ると、総記、産業部門がや
や減少した他はすべて増加している。とくに文学部門の、
67.2%と、児童図書部門の70%の増が著しかったが、これは
文学部門充実策の成果であり、児童図書部門については、
一昨年の整備充実が本年度に至って効果を表わしたと見る
ことができようし、また、貸し出し制限の緩和も大いに役
立っていると考えられる。(表1)
貸し出し登録者については 児童の86.7%の伸びがもつ
と大きく、ついで主婦の46.8%、学生、生徒の22.7%など
も目につく。 (表2)
2 調査相談業務
調査相談業務の主要なものは 参考質問に対する調査と
回答であるが、前年度に比しそれほど大きな変化は見られ
ない。
質向類型では「物事の内容」に関する質問が55.9%も増
え、質問形式では、文書による質問が減り口頭、電話が増
加しているのが特徴的である。
文書による質問は件数では減っているが、質問内容は高
度なものが多くなり、自館資料だけでは調査が不可能で、
近隣の公共図書館や大学図書館、あるいは国立国会図書館
等に再照会する例が著しく増えている。
一方 調査相談のための情報源としての参考図書は、年
次計画で逐次整備を図っているが、参考図書は貸し出しは
しないことが原則である。それは、利用頻度が高く、また、
一部分の参照だけで事定りるなどの理由からである。しか
し 利用者の強い要望により、休館日の日曜日をはさんで、
土曜日の閉館時から月曜日の開館時までの、閉館時貸し出
しを実施して要望にこたえた。 (表6)
3 展 示 活 動
図書館の展示は、主として図書館資料を使って、伝達内
容を視覚化することによって資料及び図書館の利用を案
内することにあるが、図書館のふんい気をやわらげたり、
親しみやすい読書環境を形成することにも効果的な方法な
ので、趣向をこらして開催し利用者の関心を集めた。
○ 世界の辞書展
本邦初の図解百科事典「和漢三才図会」からOxford
の各版をはじめ、世界各国語の辞書約50点を展示。