教育年報1978年(S53)-215/372page

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文化

 第1節 概     要

 昨年来、県民の文化振興に関する関心がいっそう高まるな

かで、文化行政は、計画に沿ってさらに大きく進展した。特

に、「文化を考える県民会議」の提言を具体化するため「文化

振興会議」が設置され、県立文化施設の整備や文化振興基金

の創設について、具体的にその基本的事項がまとまり、知事

に報告されたことは、県民の文化への関心をさらに高揚する

こととなった。

 また、こうした状況をふまえて、4月より芸術文化係を振興

班と改称して企画担当者を1名増員するとともに企画調整部

に文化企画担当(併任)1名を増員し、文化行政組織の強化が図

られた。さらに、年度末に文化施設等整備基金が条例設置された。

 このように、本年は県長期計画及び、第二次長期総合教育

計画の実施計画第1年度にあたり、文化行政は県政や県教育

行政の重要施策としてふさわしい進展を示し、新しい県民文

化づくりの基本的方向が固められた年であった。

 県民の自主的な文化活動は、いっそう活発化し、文化行事

の増加、文化団体・会員の増加、市町村文連結成の動き、市

町村文化施設づくり等、民間・行政とも文化への志向の高ま

りが顕在化してきた。特に、船引町では、文化課を設置する

など文化行政組織についての関心が高まり、各市町村で県民

のニーズに応ずる文化振興策が講じられるにいたった。

 また、地元報道機関も文化を大きく取り上げ、美術展、顕

彰及び実作家や団体活動の紹介等、積極的に文化志向を高揚

し、県の施策に呼応し七県民の文化活動を促進した。

 とくに県芸術祭は、企画運営・実施の改善が図られ、さら

に巡回方式第2巡目の初回に当り、県北を主催地区として、

今回より開幕行事を加えたが、これは芸術祭への関心をいっ

そう高揚し、県民の文化活動成果披露の総合的な機会として、

大きな盛り上がりを見せた。

 文化財保護についても、市町村や県民の理解もいっそう高

まり、保護体制や指定の推進が図られた。さらに、有形・無

形文化財・民俗文化財及び埋蔵文化財等、県民の文化財愛護

の精神がいっそう高揚するなかで、民間や住民の理解・協力

によって、その保存事業は円滑に推進された。

 本年度文化行政施策の成果の概要は、次のとおりである。

 1 文化活動の促進

(1)県文化行政推進のため、県文化振興会議を開催するとと

 もに、文化課芸術文化係を振興班とし、企画担当1名を配す

 るとともに企画調整課に1名おき相互併任とし、文化担当

 主幹を含め共管により会議及び文化行政の進展を図った。こ

 の会議では、文化を考える県民会議の提言のうち、文化振興

 基金の創設及び県立文化施設の整備について、施策化するた

 めの基本的なことがらがまとまり、知事に報告された。

  また、東北・北海道文化振興会議を本県当番で開催、県

 内外の行政・団体関係者が参会したことも、本県文化行政

 推進上、大きな意義があった。

  さらに、文化庁創設10周年にあたり、県内4名の文化功

 労者と1団体が文部大臣より表彰され、県民の文化活動の

 ための励しとなった。

(2)参加する文化活動も一段と活発化し、文化のふるさと指

 定による民俗芸能の振興、高校音楽祭の充実、高校文化連

 盟結成への萌芽、全国高校文化祭美術部門新設への参加、

 芸術セミナーの定着等が見られ、さらに、県展、県文学賞

 とも史上最高の応募数を示し、県民の積極的な参加の実態

 が見られた。また、県芸術祭の共催負担金を増額し開募行

 事を行って関心を高めるとともに、県北地区から始まる主

 催地区巡回方式第2巡目にあたり、地区全市町村が挙げて

 企画や経費負担に加わり、実施についても2〜3町村がチ

 ームを作って行事運営に当たるなど、行政・民間一丸となつ

 ての積極的な開催方式の創出があり、大きな成果となった。

  FMCが訪欧するに当たり県はこれを助成したが、西独

 各地での演奏及び特に認められてのローマ法王庁での演奏

 など、国際交流と親善に尽した成果は大きく、その演奏の

 国際的な賞賛は県民にも大きな感動を与え、全国的にも高

 水準にある本県合唱界にさらに大きな励しとなった。

  県収蔵美術展の収集も進み、これらの優れた作品を多く

 の県民に鑑賞してもらう県収蔵美術品巡回展も好評を博し

 た。市町村でも、県展移動展、家庭劇場、移動芸術祭巡回

 公演、こども芸術劇場、青少年芸術劇場及び県文化センタ

 一の少年劇場、青少年小劇場などについて、積極的に取り

 くみ、好評のうちに実施されるようになったことは、大き

 な前進であった。

 2 文化施設の整備

(1)県文化センターは、消防法改正に伴う大規模な改修工事

 が行われ、文化会館と美術博物館は11月より54年3月まで、

 利用休止となった。なお、53年3月平井博館長が逝去され

 たため、そのあと辺見栄之助県教育長が館長を兼務した。

(2)県文化振興会議は、県立美術館、県立博物館の整備につ

 いて協議し、昭和54年度より建設準備に入るよう基本的な

 ことがらをまとめ、知事に報告した。なお、県立図書館は、

 社会教育課主管により、従来の検討経過をふまえて早急に

 それを進めることとし、本年度後半より建設委員会が発足

 し、具体案づくりに入った。また、これら3館の建設や資

 料整備の財源確保のため、文化施設等整備基金が条例によ

 り設置され、本年度15億円が積み立てられた。

(3)各地で文化施設つくりが構想されるようになったが、本

 年度は国県助成により、会津若松市文化センターが11月に

 開館し、記念行事として県収蔵美術品巡回展が開催された。

 これは、いわき市文化センター(昭49)に次いで建設され

 た。市民の参加する文化活動の拠点であり、今後の市民の

 活用と効果ある運営が期待される。


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