教育年報1982年(S57)-284/316page
(2)郷土資料の収集
郷土資料の収集については、今年度も特段の力をいれ、
「未来への遺産、郷土の本は図書館へ」というチラシをつ
くり関係方面に配布した。今年度の傾向として、印刷技術
の進歩を反映して、複刻版が続々刊行されるようになった
ことである。諸根樟一の名著「福島県政治史 上巻」、榊
山澗の名作「歴史 みちのく二本松落城」、諏訪三郎の名
作「大地の朝」や「郷土研究 岩磐史談」がそうであり、
「大地の朝」のように当館でも所有していないものもある。
また、「福島市史資料叢書」「日本農書全集」のなかに
「信達二郡村誌」「会津農書」がそれぞれ収録され、郷土史
研究家に恩恵を与えている。
今年度に収集した郷土資料は1,813冊で、昨年度と同じ
位である。このなかには、前記の図書は勿論のこと、「岩
代町史 第4巻」「鏡石町史 第2巻」「船引町史 民俗編」
「福島人物風土記」「福島県自由民権史」「下郷殉国史」「ふく
しま戦争と人間」等の労作が含まれでいる。
県人文庫としては「櫛田民蔵全集 全5巻」を入手した。
明治時代に刑行された資料は、なかなかないが、「実業雑
誌 明治28年〜36年」を入手した。さらに、昨年度から引
きつづいて、「(財)福島県文化振興基金」で助成された図
書が寄贈され、このなかには「いわきの寺」「坂下門外の変」
等がある。
(3)新館用図書の収集
新館用図書として、基本図書、参考図書、児童図書の研
究書を11,706冊を収集した。
2 図書館資料の整備
(1)蔵書の検討
毎年、より適切な蔵書構成を図るために行われている専
門家による蔵書診断も、今年度で最後とあって、今迄一度
もやったことのない歴史・法律部門を実施した。委員は次
のとおりである。
吉村仁作 福島大学助教授 日本史
藤村俊郎 〃 教授 東洋史
伊藤昌太 〃 助教授 西洋史
中村嘉男 〃 教 授 地理学
渡名喜庸安 〃 助教授 法律一公法
稲庭恒一 〃 助教授 法律一私法
(2)蔵書目録の刊行
所蔵資料の全県的な活用を図るため、毎年編さんしてい
るもので、今年度は県内の市町村立図書館や郷土史研究家
等に長らく待望されていた「郷土資料増加目録〔昭和41年
一昭和50年〕」 を刊行した。同目録は昭和41年以降10年間
の収集成果をまとめたもので5,095冊の郷土資料を収録し
たものであり、市町村教育委員会、公民館、市町村立図書
館等に配布した。
第3節 館 内 奉 仕
1 利 用 状 況
資料利用は、公開図書室における館外個人貸出とならんで、
調査相談室における館内閲覧が、その主要なるものである。
登録者数は、前年度とほぼ同数である。(表2)
貸出冊数は、前年度比で、10%増加している。利用された
図書は、文学、社会科学、歴史地理、芸術部門の順で利用が
多い。
調査相談室では、事典・年鑑等の参考図書や郷土資料のほ
かに、更に各種の寄贈資料のうち、参考図書に準ずるものも、
できるだけ公開するように努めた。このうち、郷土資料コー
ナーおよび公開の新聞の利用が多かった。
しかし、雑誌の利用は少ないようである。その理由として、
新着雑誌は館外貸出ができないこと、整本期間が長いこと、
整本されたものは厚く重いこと、内容的に堅い雑誌のみであ
ることなどにあるようである。
児童の館外個人貸出は19.7%の増加で、全体に占める比率
は47.5%である。児童室の貸出は、小学生が最も多く、その
なかでも、特に低学年層が多い。高学年は、学校の帰りが遅
いため、閉館まぎわに走ってくることが多い。
貸出の多いものは、高学年の男子では、SF、探偵小説が
多い。そのほか、学校生活についての物語の利用も多い。ま
た、学校の都合で、母親が代って借りていく例もある。高学
年になるにつれて、ゆっくりと本を選んで、読書ということ
が難かしい状況にある。
児童室では「本のともだち」という読書ノートを貸出券と
共に交付し、読書の感想と批評を交換するようにしている。
予約図書の件数は、370件である。このうち、女が248人
(67%)で、文学関係が264件(71%)と大半を占めている。
〔表2〕館外個人貸出登録者教
(昭和57 4〜58. 3)
区分 男 女 計 構成比 勤め人 631 287 918 24.8% 自家営業 118 36 154 4.2 主婦 662 662 17.8 学生 大学 418 350 768 高校 219 315 534 中学 151 184 335 各種 30 60 90 計 818 909 1,727 46.5 無職 150 99 249 6.7 計 1,717 1,993 3,710 児童 2,043 総数に対して
35.5合計 5,753 100 (家族券25は主婦の項へ)
〔表3〕 館外個人貸出利用者数
(昭和57 4〜58. 3)
区分 人員 構成比 勤め人 5,681人 17.6% 自家営業 853 2.6 主婦 5,097 15.9 無職 1,944 6 学生・生徒 6,138 1.9 家族券 317 1 児童 12,249 37.9 計 32,279 100