教育年報1983年(S58)-285/323page

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  これからの学校教育においては、「知・徳・体の調和の

 とれた、人間性豊かな児童生徒を育成する」ことをめざし

 た教育の推進を図らなければならない。この時期において、

 各小・中・高等学校においては、適切な教育課程の編成・

 実施に努力を傾け創意ある教育活動を展開しなければなら

 ない。このような視点にたち、教育内容の質的転換を図る

 ため、「教育課程の実施に関する研修」に取り組んできた。

(2) 研究の領域

 1) 身近な材料を使ってものをつくる指導(小学校)

 2) 化学の基本法則の指導における問題解決能力の育成

   (中学校)

 3) 高等学校数学科におけるパソコンの活用(高等学校)

 4) 個の主体的な学習を促すためのサイクロトン型学習理

  論による教材・教具(高等学校)

 5) OHP活用の現状と課題解決の手だて(小・中学校)

(3) 研究の概要

 1) 身近な材料を使ってものをつくる指導

   小学校図画工作科において取り扱う「身近な材料を

  使ってものを作る」ことの意義を明確にし、新たな教材

  開発及び具体資料、作品の収集を進め、それらの体系化

  を試みるとともに、事例研究を行っている。

 2) 化学の基本法則の指導における問題解決能力の育成

   県内中学校の生徒を対象に、微視的な物質概念を形成

  させていく過程で重視される「化学の基本法則」の質量

  保存と定比例の各法則を例として、その指導と実験のあ

  り方について検討を加え、この指導を通して培い育てる

  ことのできる能力・態度について明らかにしている。

 3) 高等学校数学科におけるパソコンの活用

   パソコンの活用状況に関する実態調査の結果を踏ま

  え、数学科の授業におけるパソコンの活用のしかたにつ

  いて考察を加えている。

 4) 個の主体的な学習を促すためのサイクロトン型学習理

  論による教材・教具

   この研究は、教育課程の効果的達成をめざし、個を生

  かす授業実践をもとに設定された教育理論に基づき、教

  材・教具のありかたや方法を探究している。

 5) OHP活用の現状と課題解決め手だて

   教材・教具の開発と適切な使用による指導法の改善を

  図るため、OHPに限定し、県内小・中学校の教師を対

  象に保有台数、利用状況、利用上の問題点などの実態を

  調査し、その結果の分析・考察から、効果的な活用の方

  途をさぐろうとしている。

  第4節 教育相談に関する事業

 1 幼児・児童・生徒・父母との教育相談

(1) 幼児及び小学校低学年の児童がもつ問題行動の矯正治療

 には、遊戯(運動)療法を原則として用い、ケースによっ

 ては、行動療法もあわせて実施した。

(2) 小学校高学年の児童及び中学校・高等学校生徒に対して

 は、主としてカウンセリングを実施し治療にあたってきた

 が、自律訓練法、行動療法や箱庭療法なども取り入れて実

施した。

(3) 父母に対しては、子供のもつ問題行動の矯正治療の効果

 を高めるために、親子関係の改善、しつけや養育態度の正

 しいあり方について気づくように指導助言をした。

(4) 遠隔地や家庭の事情などのため、来所することがむずか

 しい地域には、教育相談部所員が出張し移動教育相談を実

 施した。本年は、原町市、棚倉町、いわき市、会津若松市

 の4会場で延べ12日間実施した。

(5) 来談した幼児・児童・生徒め問題行動の矯正治療の効果

 を高めるため当該保育所、幼稚園、学校側との密接な協力

 関係を保つほか、福医大、児童相談所、精神衛生センター

 など関係諸機関との連携を図りながら子供に対する治療

 援助の徹底に努めた。

(6) 学校からの要請によって、学校で行われている教育相談

 の諸問題については、電話による相談や当該所員の派遣な

 どによって、それらに応じた。

 2 教育相談の実施状況

(1) 相談者の延べ人数
年度/対象別 幼児 小学生 中学生 高校生 一般教員 電話
昭和58年度 139 292 611 392 278 1,229 2,941

(2) 相談者の内容別延べ人数
年度/内容別 面接相談 電話
知能
学業
性格
行動
身体
神経
進路
適性
教育
一般
昭和58年度 32 1,455 156 22 47 1,229 2,941

(3) 相談者の地区別延べ人数
地区別 県北 県中 県南 会津 南会津 いわき 相双
相談者数 1,028 423 53 41 2 43 122 1,712

(4) 教育相談の現状と課題

 1) 来談者を昨年度と延べ人数で比較すると304人と大幅

  に増加し、中でも教員の来所の増加が顕著である。

 2) 問題点を学校種別に整理すると、小学生では親の愛

  情欠損や母子分離不安が問題行動をおこす背景となる

  ことが多く、両親の養育態度の改善が望まれる。

   中・高校生では友人関係や進路に関する相談が多く、

  現実自己と理想自己とのずれを自分の力で埋めること

  ができず、一人で悩むことが多い、この時期に親や教

  師が適切な助言を与え、年齢に応じた判断力を育てる

  とともに、対人関係での協調性を高め、自立心を育て

  る配慮が強く望まれる。


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