教育年報1984年(S59)-168/287page
該市町村教育委員会が主体者となって実施しているが、
遺跡の重要性や調査体制の弱い所については、必要と認
めた場合、県教育委員会の専門職員を派遣し指導してい
る。主なものは、次の通りである。
大久保窯跡群(新鶴村)・南原窯跡群(会津若松市)
・上小島遺跡(西会津町)・上野台遺跡(国見町)・
志古山遺跡(天栄村)・武ノ内遺跡(霊山町)・大榧遺跡(桑折町)
・郡遺跡(いわき市)・小浜古墳群(富岡町)・
九郎五郎遺跡(郡山市)
(3)史跡指定調査
1)目 的
歴史上重要な遺跡の史跡指定を積極的に進めるために
発掘調査を行い、基本資料を整備する。
2) 調査対象
関和久上町遺跡(西白河郡泉崎村大字関和久所在)
3)調査指導委員
伊東信雄(東北学院大学教授)
・坪井清定(奈良国立文化財研究所所長)
・梅宮茂(県文化財保護審議会委員)
・岡田茂弘(国立歴史民俗博物館教授)
・進藤秋輝(宮城県多賀城跡調査研究所考古一科長)
4)調査期間
昭和59年10月11日〜11月10日
5)調査結果
竪穴住居跡7軒が出土した。カマド材として瓦が利用
されており、中にヘラ書きで「寺」の文字のあるものが
ある。矢吹町かに沢窯跡にも同じ例があり、ここの製品
であろう。また、漆付着の土師器杯が3点あり、岩場も出
土している所から、何らかの工房地区の可能性が強くな
っている。
(4)埋蔵文化財保護体制充実のための研修
1)第12回福島県埋蔵文化財発掘技術講習会
・8月17日〜8月24日
・会場 (財)福島県文化センター
・人員 16名
・内容 埋蔵文化財保護の現状・分布調査の方法と計画
・発掘調査の方法と計画・縄文と弥生土器の見
方・縄文と弥生土器の編年・縄文と弥生土器の
実測・石器の見方・石器の実測・県内の官衙跡
について・県内の社寺跡と城館跡について・土
師器と須恵器の見方・土師器と須恵器の編年・
県内の古墳について・上人壇廃寺及び米山寺経
塚群について・土師器と須恵器の実測・資料整
理及び報告書の作成・遺跡見学
2) 埋蔵文化財センター主催埋蔵文化財発掘技術者研修
・埋蔵文化財基礎課程 59年7月5日〜7月11日
佐藤勝夫 (財)福島県文化センター遺跡調査課
・一般課程 59年7月24日〜8月25日
渡辺重治 福島市教育委員会
双石正義 白河市教育委員会
中山雅弘 (財)いわき市教育文化事業団
水沼良夫 天栄村村史編さん室
・石器調査課程 59年4月26日〜4月28日
松本茂 (財)福島県文化センター遺跡調査課
・環境考古課程 60年1月17日〜2月2日
鈴鹿良一 (財)福島県文化センター遺跡調査課
・縄紋施紋法調査課程 60年2月14日〜2月16日
水沼良夫 天栄村村史編さん室
・埋蔵文化財情報課程 60年3月5日〜3月14日
佐藤典邦 (財)いわき市教育文化事業団
(5)埋蔵文化財保護の普及活動
1) 発掘調査報告書等の刊行
ア 真野ダム関連遺跡発掘調査報告7
イ 母畑地区遺跡発掘調査報告17・18・19
ウ 母畑地区遺跡分布調査報告20
エ 矢吹地区遺跡分布調査報告5
オ 国営会津農業水利事業関連遺跡調査報告3
カ 相馬地域開発関連遺跡発掘調査略報
キ 一般国道113号バイパス関連遺跡発掘調査報告1
ク 関和久上町遺跡(史跡指定調査概報)3
ケ 関和久遺跡
コ 福島県埋蔵文化財分布図・一覧表
5)遺跡周知事業
昭和58・59年の2ヵ年事業として、県内の遺跡分布につ
いて調査を行い、8,000個所をこえる遺跡について周知する
ことができ、結果は2.5万分の1の地図に点でなく「面」で
示すこととし、あわせて遺跡一覧表をも作成した。
(7)県内の発掘調査の状況
発掘調査と試掘調査の割合は、昨年度よりも試掘調査の
数が増加して、ほぼ半々である。いずれも農業基盤整備事
業に伴うものが大部分である。学術調査は8件で、その中
には町史編さんや博物館資料収集なども含んでいる。
昭和59年度発掘調査件数(60年2月末現在)
調査の原因/方部 県北 県中 県南 会津 南会津 相双 いわき 計 農地開発(国・県個体) 1 73 6 18 9 1 108 〃 (個 人) 1 1 2 都 市 計 画 等 1 1 1 3 道 路 建 設 7 1 1 3 1 13 土地開発等土木工事 1 3 3 25 1 33 宅 地 造 成 1 1 1 5 8 環 境 整 備 重要遺跡確認 1 2 1 2 1 7 市町村史遍さん 3 3 6 学 術 調 査 2 1 3 そ の 他 1 1 2 計 9 85 13 23 1 44 10 185
発掘調査件数185件の内訳は、県教育委員会が実施したもの100件、市町村教
育委員会が実施したもの82件、その他3件である。なお、事前協議のための予備
調査が、111件を数え目立っている。