握し、それに対して、医学の面、福祉の面、そして教育の
面から総合的に治療や指導、援助を行うことがきわめて大
切である。
一方、学校教育においては、現行の小・中学校学習指導
要領や盲・聾・養護学校の学習指導要領の総則の中にも子
供の実態に即した指導の必要性が明確に位置づけられてい
る。したがって、心身障害児が在籍する各学校や各学級に
おいては、これらの内容を正しく受けとめた教育的対処の
在り方が問われることになる。加えて、障害の重度化・重
複化、さらには多様化の傾向が進み、児童生徒一人一人の
実態とそれに応じた適切な指導援助の在り方の研究の必要
性が、一層増してきている。
そこで、本研究では、「心身障害児の指導援助のための実
態把握の方法に関する研究」の主題のもとに、心身障害児
の指導援助のために、どのように実態把握を進めたらよい
か、また、把握した実態を、実際の指導援助にどのように
生かしたらよいかについて研究を進め、心身障害児の教育
実践の一助にしたい。
(3) 研究の概要 (第1年次)
1) 心身障害児の実態把握と指導援助に関する調査
県内の盲学校、聾学校、養護学校14校と1分校の小学
部及び中学部(訪問学級を含む)の学級担任(各学級1
名、教諭のみ)250名と、県内の各教育事務所管内の小
・ 中学校特殊学級設置校の中から無作為に抽出した133
校の特殊学級担任(教諭のみ)150名の合計400名に対
し、アンケートによる調査を実施し、その結果を分析し
考察を加えた。
2) 心身障害児の実態把握と指導援助に関する理論と考察
心身障害児の実態把握と把握した実態に即応した指導
援助の在り方に関して、現在いろいろな考え方があるが、
その中から、近年話題となっている、発達診断、行動変
容、コミュニケーション、カウンセリング等について、
その考え方を概観し、実態把握と指導援助の立場からそ
の考察を行った。
2 個人研究
(1) 長期研究員による研究
研究主題 研究内容 弱視児の環境認知 視覚情報の収集に制約がある強 の高次化に関する事 度弱視児(先天性緑内症のため視 例的考察 力が右0.02、左手動弁)の環境認 一S児の環境認知 知能力は、視覚だけでなく、その のための情報収集 他の感覚の活用による情報収集能 のあり方の改善― 力を改善・向上させることによっ て高まっていくという仮説のもと (石川浩) に「保有する視覚に関する指導」、 「視覚補助具の活用に関する指導」 と「総合的な知覚能力の向上を図 る指導」を行った。そして、それ らの結果や対象児の学習中の様子、 また指導前後のフロスティック視 知覚発達検査の結果をもとに考察 を行った。
研究主題 研究内容 重度・重複障害児 はた目には行動の発現が微弱で、 の行動体制の形成・ 外界に対して自発的に働きかける 拡大に関する実践的 行動も乏しいように見える重度・ 研究 重複障害児といわれる子供におい 一探索行動の形成 て、その示す行動をどのように理 ・拡大を促すため 解するかが、教育的かかわり合い の援助活動のあり を進める上で重要な問題である。 方を中心に一 そこで、子供が展開している生命 活動のあり様やその行動の起こる (石井正明) にいたった諸条件を吟味しながら 行動の理解に努め、どのような状 況の設定や整備、働きかけをすれ ば、より能動的・積極的に探索行 動が促進され強化・拡大すること になるのか、その援助活動のあり 方について具体的な事例を通して 検討を行った。
(2) 所員による研究
教育相談及び研修講座の内容を充実させるため、所員各
自が、それぞれ担当障害分野ごとに研究主題を持ち、個人
研究を進めた。
第5節 教育図書・資料の収集・提
供事業
1 教育図書・資料の収集・整理
養護教育センターでは、養護教育に関する研修・研究・相
談事業の充実と、県内各学校等における研究活動及び教育実
践に寄与できるよう、教育図書・資料の収集・整理を行い、
心身障害児教育に関する図書・資料のセンター的な機能を果
たすように努めた。
(1) 教育図書の収集・整理
教育図書については、養護教育に関する専門図書の充実
に努め、本年度267冊を新規に購入した結果、蔵書数は
4,725冊となった。その種類は、心身障害児の教育関係図
書が2,858冊となり、医学関係図書が322冊、心理関係図
書が146冊、その他の図書が1,399冊となった。これらの
図書は、NDCの分類基準に従い分類・配架されていて、
いつでも利用できるようになっている。
また、50音検索カード及び分類記号検索カードが準備さ
れているので、図書の検索が一層便利になった。
(2) 教育関係定期刊行物の収集・整理
教育関係定期刊行物は、県費購入及び寄贈などにより、
38種類で710冊に達した。
(3) 教育資料の収集・整理
教育資料は、全国の関係機関や県内の教育機関の協力に
より、研究紀要・研究報告書等の収集に努めており、集ま
った200冊余りについて「教育資料分類基準」に従って分
類するとともに、県内の資料については、更に、学校別に
分類・配架した。