教育年報1989年(H1)-188/237page

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 によって引き起こされる機能的な支障である「能力障害」

 及びその能力障害のためにそのままでは生活しにくい不自

 由な状態、つまり、「社会的不利」の3つのレベルとして

 とらえるのが望ましいという主張がなされている。このよ

 うな心身障害児一人一人に適切に対処するためには、個々

 の子どもについて、必要に応じて、この精神的な損傷、能

 力障害及び社会的不利に関する実態をきめ細かに把握し、

 それに対して、医学の面、福祉の面、そして教育の面から

 総合的に治療や指導、援助を行うことがきわめて大切であ

 る。

  一方、学校教育においては、小・中学校学習指導要領や

 盲・聾・養護学校の学習指導要領の総則の中にも心身の障

 害の状態及び特性等に応じた指導の必要性が明確に位置付

 けられている。したがって、心身障害児が在籍する各学校

 や各学級においては、これらの内容を正しく受けとめた教

 育的対処の在り方が問われることになる。加えて、障害の

 重度化・重複化、さらには多様化の傾向が進み、児童生徒

 一人一人の実態とそれに応じた適切な指導援助の在り方の

 研究の必要性が、一層増してきている。

  そこで、本研究では「心身障害児の指導援助のための実

 態把握の方法に関する研究」の主題のもとに、、心身障害児

 の指導援助のために、どのように実態把握を進めたらよい

 か、また、把握した実態を、実際の指導援助にどのように

 生かしたらよいかについて研究を進め、心身障害児の教育

 実践の一助にしたい。

(3) 研究の概要(第2年次)

 1) 調査の集計と考察

   昨年度実施した実態把握に関するアンケート調査の中

  から、具体的事例における実態把握の様相について集計

  を行い分析し考察した。

 2) 実態把握の在り方の方向付け

   子どもの行動の読み取り方と、そこに影響を与える人

  間関係及び子どもの行動の発現の在り方について検討を

  行い、関与的な行動観察の重要性を論じた。

 3) 行動記録表、(試案)の作成

   実態把握の方法の一つである行動観察について、その

  視点となる子ども自身を基準にして行動のレベルを探る

  行動記録表の試案を作成し、事例に適用した。

 2 個 人 研 究

(1) 長期研究員による研究

研 究 主題 研  究  内  容
 発達の遅れを伴う  様々な行動特徴があり、音声言語や
自閉症M児における 文字言語を獲得していない、あるいは
コミュニケーション 適切に使うことのできない発達の遅れ
の拡大を図るための 伴う自閉症児において、その時々に
事例的考察 示す行動をどのように理解し、コミュ
一M児との適切なか ニケーションを図ることができるかが
かわりを求めて一 教育的かかわりを進めるうえで大切で
  ある。
(円谷美智子)  そこで、子どもが示すあらゆる行動
  を肯定的にとらえ、行動の理解に努め
  ながら、現時点の状態をよりいくらか
  でも進展するような援助をしながら、
  安定したコミュニケーションの成立を
  目指し、具体的な事例を通して検討を
  行った。
 重度・重複障害児  はた目には行動の発現が微弱で、外
の行動体制の形成・ 界に対して自発的に働きかける行動も
拡大に関する実践的 乏しいように見える重度・重複障害児
研究 といわれる子どもにおいて、その示す
一探策行動の形成・ 行動をどのように理解するかが、教育
拡大を促すための 的かかわり合いを進める上で重要な問
援助活動の在り方 題である。そこで、子どもが展開して
を中心に いる生命活動のあり様やその行動の起
その2一 こるにいたった諸条件を吟味しながら
  行動の理解に努め、どのような状況を
(石井正明) 設定し整備し働きかけをすれば、より
  能動的・積極的に探索行動が促進され
  強化・拡大することになるのか、その
  援助活動の在り方について具体的な事
  例を通して検討を行った。

(2) 所員による研究

  教育相談及び研修講座の内容を充実させるため、所員各

 自が、それぞれ担当障害分野ごとに研究主題を持ち、個人

 研究を進めた。

(3) 奨励研究

  次の3名の奨励研究の報告会を実施した。

 ○ 福島県立盲学校教諭  小野祥一郎

  「シリコンゴムを使用した教材作りとその活用について」

 ○ 福島県立須賀川養護学校教諭   大堺孝昭

  「気管支喘息児に対する『動作訓練』指導の試み」

 ○ 福島県立富岡養護学校教諭    高橋佑治

  「自閉症児の指導の在り方」

第5節 教育図書・資料の収集・

       提供事業

 1 教育図書・資料の収集・整理

 養護教育センターでは、養護教育に関する研修・研究・相

  談事業の充実と、県内各学校等における研究活動及び教育実

践に寄与できるよう、教育図書・資料の収集・整理を行い、

心身障害児教育に関する図書・資料のセンター的な機能を果

たすように努めた。

(1) 教育図書の収集・整理

  教育図書については、養護教育に関する専門図書の充実

 に努め、本年度239冊を新規に購入した結果、蔵書数は、

 4,964冊となった。その種類は、心身障害児の教育関係図

 書が2,891冊となり、医学関係図書が325冊、心理関係図

 書が146冊、その他の図書が1,602冊となった。これらの

 図書は、「日本十進分類法」の分類基準に従い分類・配架

 されていて、いつでも利用できるようになっている。


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