教育年報1992年(H4)-174/225page
○ よさのレーダーグラフ ○ 聞いてねカード
○ いいこと見つけたカード
(2) よさを生かし、伸長する支援の在り方について
一人一のよさが見いだされ、学級の中で活動できるよ
うになるまでには本人の努力や教師、級友の支援が必要
になる。この支援の在り方については、事例を通して次
の点が肝要であることが明らかになった。
○ よさを認める ○ よさを一層伸長させる
○ よさに気付かせる ○ 学級全体で支援する
○ 自信を持たせる ○ 学級経営の中心に据える
次年度は、新研究主題「社会の変化に対応する学校経
営の在り方に関する調査研究」のもとに、社会の要請に
こたえる新しい学校づくりについての調査・研究を通し
て、社会の変化に対応する学校経営の在り方を具体的に
まとめる。
2 一人一人の個性を生かす評価の在り方
に関する研究 学習指導部(第1年次)
本研究は、一人一人の「個性(よさ)」を生かす学習指導
と評価の在り方を求めて、3年計画で実施するものである。
第1年次の本年度は、基礎的な資料を得るための「評価に
関するアンケート調査」と仮説設定のための試行的検証授業
を小学校社会科で実践した。
「評価に関するアンケート調査」では、特に関心・意欲・
態度の情意面を中心とする問題点を探るために、小・中・高
等学校教諭290名を対象に意識調査を実施した。その結果、
「主観的になりがちである」「評価基準の設定が難しい」な
どの悩みとともに、評価の客観性を高めようとする工夫や評
価基準を明確に設定しようという努力もなされていることが
分かった。
「試行仮説による小学校社会科における実践」では、単元
の中に、自己評価を中心に、相互評価、教師からの評価を組
み合わせ、学習活動のまとまりことに評価機会を設定し、関
心・意欲や思考力、判断力、表現力の高まりをとらえること
をねらった。その結果、評価の手だての工夫によって、児童
が自分自身を見つめ、意欲を高めていくことが分かった。相
互評価としての「贈る言葉」、教師の総合的診断と援助を
「メッセージカード」として実施したことも有効であった。
今後の課題としては、情意面評価について自己評価方法の
具体的な手だての工夫や評価基準の設定、評価の客観性を高
める工夫などがあげられる。これらの課題を踏まえつつ、次
年度以降の実践研究に臨みたい。
3 児童生徒の創造性を高めるための教材
開発
―体験的な活動を重視して―
科学技術教育部(第1年次)
本研究は児童生徒に、体験的な活動を重視した学習指導を
通して創造性を高める教材開発を行う。
本年度は「創造性」の文献研究や、新学習指導要領の分析
とアンケート調査により、次のような教材開発を行った。
1 小学校理科
新学習指導要領で新出、学年変更、取り扱い方が変更さ
れた指導内容について次のような教材を開発した。
○1世代が短く、飼育や観察の容易な「フタホシコオロギ
の飼育とその活用」
○短時間で観察できる「ポーチュラカ類の開花運動の観察」
○「インジコカーミンを用いた酸素の検出法」
○意外性のある「豆電球を用いた電流による発熱量の測定」
○家庭用ラップの「しん」を用いた「上皿てんびんづくり」
○鮮明な映像を得る「月・太陽用簡易ビテオ撮影システム」
○資料「県内の火成岩及び火山灰層の分布とその教材化」
2 中学校技術・家庭科
新学習指導要領に新設された「家庭生活」領域の指導計
画を作成し、次のような教材を開発した。
○自己認識を図る「パソコンを活用した家庭生活自己診断」
○学習の個性化・個別化を目指す「室内の整備と美化に役
立つ小物の製作」(タオルストッカー、ポット台等)
次年度もこの研究を継続し、新たな教材の開発を図る。
また、開発した教材を研究協力校で試行し、その成果と問
題点などを把握して改善を図りなから2年間の研究をまと
める。
4 開発的な指導援助の在り方に関する研
究 教育相談部(第3年次)
本研究では、「児童生徒が自己理解を図り、自ら向上を求
め、将来の見通しを意識しながら自己実現に向かって自発的
に進んでいくことができる」ようにするための開発的な指導
援助の在り方について、3年間にわたって実践的に追究して
きた。結果については、下記のようにまとめることかできる。
(1) 開発的な指導援助の基盤は、教師と児童生徒及び児童生
徒相互の望ましい人間関係である。
(2) 開発的な指導援助は、学校教育の全領域にわたって充実
させることが必要である。
(3) 「健康」「安全」「所属と愛情」「自己理解」「自尊」
「将来への向上」の要件は、開発的な指導のための必要不
可欠なものである。
(4) 「健康」「安全」「所属と愛情」の3つの要件は、指導
援助のための基本的条件である。
(5) 6つの指導援助は単一に機能するものではなく、相互に
深くかかわっている。
(6) 開発的な指導援助は、児童生徒に対する教師の有り様が
問われる。
(7) 児童生徒の「よさ」や「可能性」に気付くことができる
ように、教師自身の感性を豊かにするように心をくだかな
ければならない。
教師の受容を基盤とした援助によって自信を取りもどし意
欲的になった児童生徒が多く見られた。開発的な指導援助は
教育における指導援助の基盤であることが明らかにされた。