教育年報1992年(H4)-181/225page
の開発・工夫は避けて通れない課題であるが、特に、入力
方法に困難さを示す肢体不自由教育の場合がより顕著であ
る。入力方法の問題さえ解決できればコンピュータは彼ら
にとって、コミュニケーションの手段や補助具として、有
効なものと成り得る可能性をもっている。
そこで本年度は、肢体不自由教育に的を絞り主に入力装
置の開発、活用の方法及びプログラムの作成等を行って、
コミュニケーションの支援、生活の支援、学習の支援を目
的としたコンピュータ活用の可能性を探った。
(3) 研究の概要(第2年次)
1) 研究計画
○ 肢体不自由教育におけるコンピュータ活用の試行と
実際
○ 所員のコンピュータ実技研修
○ 研修講座への試行的採用
○ 第2年次研究のまとめと次年度研究課題の検討
2) 研究方法
周辺機器のうち主に入力装置の開発、活用の方法及び
プログラムの作成等の実践研究を福島県立郡山養護学校
(肢体不自由)の協力の下に、小学部3名を対象として
進めた。
3) 研究実践
〔事例1〕
左手の粗大な動きに対応できる大型プッシュスイッチの
作製により、コンピュータ操作を可能とし、コミュニケー
ションの手段とした事例
〔事例2〕
舌打ちの音によりコンピュータを操作し、簡易ワープロ
及びコミュニケーションの手段として活用した事例
〔事例3〕
脳性まひで運動機能障害はあるが、右足指でコンピュー
タを操作し、学習活動を支援することを目的とした事例
(4) ま と め
肢体不自由教育においてコンピュータを活用するために
は子どもを入力装置に合わせるのではなく、子どもに合わ
せた反応入力装置の開発が必要になる。同時に、教師は、
子どもの力を精一杯発揮させ、どうずれば子どもたちが生
き生きと生活し、学習や人とのかかわりが可能になるのか
など、常にコンピュータ活用に対する目的の明確化と焦点
化を行うことが大切になる。
また、養護教育全体でコンピュータを活用して、一人一
人の子どもの主体的学習、生活を目指すためには、今後、
次の3つの課題を解決する必要がある。
○ 肢体不自由教育においては、今後、移動を含めた生活
全般への支援に広げることを考える必要がある。
○ 障害によっては、入力装置の開発に限らずディスプレ
イ、プリンターなどの開発や改良が必要になる。また、
ソフトウェア自体も重要な位置を占める場合が考えられ
るので、その開発も課題となる。
○ 養護教育でコンピュータを有効に活用するためには、
廉価・軽量小型のコンピュータの開発が必要になると同
時に、これらの研究成果を含めた、情報の交流及びハー
ドウェア、ソフトウェアの流通が必要になる。
2 個 人 研 究
(1) 長期研究員による研究
○ 「ライ症候群M児の行動拡大を図るための事例研究」
―主として行動の読み取りを中心に―
福島県養護教育センター長期研究員 根本峰雄
○ 「登校拒否児童生徒への指導援助の在り方」
―グループ活動を通して―
福島県養護教育センター長期研究員 高橋正美
○ 「養護教育におけるコンピュータ活用のための評価に
関する研究」
福島県養護教育センター長期研究員 渡邊世子
(2) 奨励研究
○ 「学校生活に適応させるための指導援助の在り方」
―軽度精神遅滞児T・Mとのかかわりを通して―
伊達郡桑折町立醸芳中学校教諭 浅見肇
○ 「一人一人が主体的に参加できる遊びの場面を設定す
るには、どうずればよいか。」
福島県立大笹生養護学校教諭 鴻野美子
第5節 教育図書・資料の収集・
提供事業
1 教育図書・資料の収集・整理
(1) 教育図書の収集・整理
教育図書については、養護教育に関する専門図書の充実
に努め、本年度89冊の新規購入及び寄贈の結果、蔵書数は
5,248冊となった。その種類は、心身障害児の教育関係図
書が2,972冊となり、医学関係図書が349冊、心理関係図
書が167冊、その他の図書が1,760冊となった。これらの
図書は、「日本十進分類法」の分類基準に従い分類・配架
しているので、いつでも利用できるようになっている。
また、50音検索カード及び分類記号検索カードを整え、
コンピュータによる検索もできるようにして、問い合わせ
等に応じられるようにした。
(2) 教育関係定期刊行物の収集・整理
教育関係定期刊行物については、県費により今年度33種
類を購入した。なお、これまでの購入や寄贈等により2,265
冊に達している。
(3) 教育資料の収集・整理
教育資料は、全国の関係機関や県内の教育機関の協力に
より、研究紀要・研究報告書等の収集に努めており、集ま
った178冊余りについて「教育資料分類基準」に従って分
類した。県内の資料については、更に、学校別に分類・配
架した。
2 教育図書・資料の利用
本年度の図書・資料は、養護教育センターの研修参加者を
含め、県内の養護教育に携わる教職員によって利用されてき
た。また、普通教育に携わる教職員や、障害児の保護者の利