教育年報1993年(H5)-191/235page

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第4節 教育調査・研究事業

 1 共同研究(3年継続、第3年次)

(1) 研究主題

  養護教育におけるコンピュータ活用に関する研究

  ―護教育におけるコンピュータ活用の実際(その2)―

(2) 研究の主旨

  本研究は、県内の盲・聾・養護学校、特殊学級設置小・

 中学校におけるコンピュータ活用に関する現状を調査研究

 すると共に、コンピュータ活用に関する国立特殊教育総合

 研究所をはじめとする先進的研究を進めている特殊教育セ

 ンターの優れた実践を文献等で調査収集し、障害がある子

 ども達一人一人の実態に即した、効果的なコンピュータ活

 用の方向性を探り、さらに、各障害毎の実態を踏まえて、

 個々の障害を克服するためのコンピュータ活用の在り方を

 探ることを意図したものである。

(3) 研究概要(第3年次)

 1) 本年次研究の目的

   昨年度に行った肢体不自由教育におけるコンピュータ

  活用の研究を基に、研究対象を盲・聾・精神薄弱・病弱

  教育に広げ、コンピュータのCAIとしての活用を中心

  に、入力装置等の開発、活用の方法及びプログラムの作

  成・修正などを行って、それぞれの障害教育のニーズに

  応じたコンピュータ活用の可能性を探る。

   併せて、肢体不自由教育の分野で、パケット通信を取

  り上げ、「生涯教育、交流教育に生かすコンピュータ活

  用」の可能性を探る。

 2) 研究実践

〔事例 1〕 ―盲教育―

  点字タイプライターで点字を打つことはできるが、触読

 が困難な盲児に点字学習への意欲を持続させるためにコン

 ビュータを活用した事例

〔事例 2〕 ―聾教育―

  文章を書いたり、読んだりすることが苦手な聴覚障害児

 に、コンピュータを活用して、意欲的に文章表現に取り組

 ませた事例

  ―学校全体でコンピュータのCAI的活用を図る試みの

   中で―

〔事例 3〕 ―精神薄弱教育―

  コンピュータの操作環境を整備し、学習に必要な興味・

関心の拡大を図り、弁別学習へのレディネスを高めた事例

〔事例 4〕 ―精神薄弱教育―

  ソフトウエア選択の工夫や、大型TV画面への表示によ

 り、授業の中でコンピュータ活用を図り、助詞の指導に効

果を上げた事例

〔事例 5〕 ―肢体不自由教育―

  パケット通信を通して、同じ趣味をもつ自分の出身地の

人と友達になり、誘われて友達の家に遊びに行ったり、友

達が遊びに来たりするなど、交流が広がってきている事例

〔事例 6〕 ―肢体不自由教育―

  パケット通信という趣味を通して、友達や地域の人との

 交流を図り、併せて社会的なルールや責任を学び、生活経

 験を豊かにしていった事例

〔事例 7〕 ―肢体不自由教育―

  コンピュータをコミュニケーションの補助的手段として

 活用したり、余暇活動の一環として友人や地域の人と共通

 の趣味を通してかかわりをもち、生活経験を広げ、主体的

 な生活が送れるようになってきた事例

〔事例 8〕 ―肢体不自由教育―

  舌打ちによりコンピュータを操作し、簡易ワープロ及び

 コミュニケーション手段として活用した事例

〔事例 9〕 ―肢体不自由教育―

  脳性まひ(四肢まひ)で運動機能障害があるため、右足

 指でのコンピュータ操作を可能にし、学習活動を支援する

 ことを目的とした事例

〔事例 10〕 ―病弱教育―

  病弱で能力差のあるG児とH児の二人が、コンピュータ

 ゲームを共に楽しむことによって、対人関係を促進すると

 ともに、国語や算数の学習内容に積極的に取り組んだ事例

(小学部)

〔事例 11〕 ―病弱教育―

  心身症(登校拒否)の生徒がコンピュータ活用を通して

 不安を軽減し、友達や教師に意識的にかかわりをもち、自

 ら選んだソフトウエアで共に学習に取り組んだ事例(中学

 部)

〔事例 12〕 ―病弱教育―

  放課後の活動でコンピュータを活用することによって対

 人関係を改善し、商業の簿記などの学習に自信を持って取

 り組めるようになった事例(高等部)

(4) ま と め

  本研究を通して、コンピュータは、活用目的を明確にし、

 それぞれの障害に応じた入力装置、出力装置等を工夫・開

 発すれば、さまざまな面で有効であることが実証された。

  しかし、コンピュータを使用するのは、一人一人の子ど

 もであることから、子どもの実態に応じた活用の方法と工

 夫が必要である。

  その際、コンピュータの活用によって、それぞれの障害

 の補償や代行が可能になるが、コンピュータを有効に活用

 するためには、学習や生活上の基本的能力が基礎となるこ

 とを忘れてはならない。コンピュータの活用が、障害児の

 能力を伸ばす上で、かえってマイナスにならないように留

意することが大切である。

  養護教育において有効なコンピュータ活用を図るために

 は、次の5点が課題となる。

 1) 学校全体でコンピュータ活用を目指すことの重要性

 2) 豊富なソフトウエアの蓄積とその情報提供の場、流通

  経路の確保

 3) 養護教育におけるコンピュータ活用のための周辺機器

  等の改良・工夫

4) 生涯教育・交流教育に生かすコンピュータ活用

5) 一般の小・中学校、高等学校のCAI研究の情報収集

  の重要性


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