教育年報1994年(H6)-189/231page
第4節 教育調査・研究事業
1 共同研究(3年継続、1年次)
(1) 研究主題
養護教育における教材・教具の工夫と活用に関する研究
―教材・教具活用の視点と方法―
(2) 研究の趣旨
現代の情報化社会における学校教育の当面する課題は数
多くあり、その解決を図るひとつの視点として、教材・教
具の工夫と活用が、今大きな注目を浴びている。
養護教育においても、特に、児童生徒の障害が、多様化
している今日、一人一人の発達を促す教育活動に、教材・
教具の果たす役割はきわめて大きなものがある。
このような中で、一人一人の子どもの教育的な効果を考
えると、教師自らが、担当している子どもへの指導計画に
沿って、自作教材・教具を新たに開発して指導していくこ
とも大切になる。
そこで、今年度から3か年計画で、養護教育における教
材・教具の開発・活用の基本的なねらいと利点を明確にし
ながら、各障害に即した自作教材・教具の開発・活用・整
備・流通のあり方を探ることにした。
(3) 研究の構想
本研究の重点目標は次のとおりである。
1) 県内の盲・聾・養護学校及び特殊学級等設置小・中
学校における自作教材・教具の開発状況や活用等の実
態調査を行い、現状と今後の課題を探る。
2) 養護教育における教材・教具の開発・活用の基本的
なねらいと利点を明確にする。
3) 各障害に即した養護教育における教材・教具の開発
・活用の実際について研究を進める。
(4) 1年次の研究(福島県の養護教育における自作
教材・教具の活用等の実態調査)
1) 研究目的
県内の盲・聾・養護学校、特殊学級等設置小・中学校
で養護教育に携わる教員の自作教材・教具の工夫と活用
の実際、流通の状況、研修状況、また、教材・教具の工
夫と活用に対する意識などの実態を明らかにし、養護教
育における教材・教具の工夫と活用の現在の課題及び今
後の養護教育での教材・教具の活用の視点と方法を探る。
2) 研究の成果(アンケート調査)
(a) 自作教材・教具の開発、流通の状況及び意識
○ 自作教材・教具の作製の経験をもつ教員は、全体
の56%を占めている。自作教材・教具を作製したこ
とのない教員の理由を見ると、「作製しなくとも先
輩の作製したものを活用したりして日々の指導に充
分な成果を上げている」と述べている。現場の教員
が、自作教材・教具の作製とその活用に高い関心を
示していることが分かる。
・ 「自作教材・教具」情報収集や資料の提供等につ
いては、全国の養護教育関係の機関から紹介された
教材・教具についての研究に関する書物を読んだこ
とがあると回答したのは65%である。そのうち書物
を参考にして実際に教材・教具を自作した経験を持
つ回答者が34%という結果であった。このことは、
適切な情報を多く提供していけば障害をもつ子ども
の指導に自作教材・教具がかなり使われることを意
味している。
(b) 自作教材・教具の開発に関する研修の状況及び意識
教材・教具の作製に関する研修に絞って設問したた
め「ある」と回答したのは、全体の31%と少なかった
ものの、その中の63%が当センターの研修講座であっ
た。このことから、養護教育にかかわる教材・教具の
研修場所として当センターが、大きな位置を占めてい
ることが分かる。今後さらに研修講座を充実させてい
くことが望まれるものと思われる。
(c) これからの教材・教具の活用
教材・教具の活用についての研修のニーズは、より
具体的な研修を求めるものが圧倒的に多かった。また、
具体的な問いに関しては、教科学習にかかわる教材・
教具の研修を求める声が多かった。
さらに、県内の養護教育に携わる教員の多くが「教
材・教具センターの機能を果たしてほしい。」「情報
の広報をしてほしい。」という希望をもっていた。本
研究がより具体的な現場のニーズに応えるものとして
確認できた。
3) 今後の課題
(a) 学校現場サイドの課題
○ 教材・教具作成の時間の確保等、学校経営にゆと
りをもち、授業充実について取り組む必要がある。
(b) 養護教育センターの課題
○ 教材・教具活用の研修に限って言えば、きわめて
研修の機会が少ないことが分かった。当センターで
は、研究の内容を考慮し、研修の充実を図る必要がある。
○ 作製した作品を5点以内に限って回答を求めたた
め、全体的に作製された自作教材・教具の全体像を
把握できるものではなかった。次年度以降にはさら
に具体的な調査が必要である。
◎ 昨年度までの研究「養護教育におけるコンピュータ活用
に関する研究」の継続研究として次の実践を行った。
≪事例1≫ マウスを改良し、集団活動場面におけるコンピ
ュ一タ活用を図った事例
<協力校 福島県立須賀川養護学校>
≪事例2≫ トーキングエイドを使用している脳性まひのあ
る生徒のコンピュータ活用を図るために、キーボ
ードの改良を行った事例
<協力校 福島県立平養護学校>
2 個人研究
(1) 長期研究員による研究
○ 「ライ症候群M児の行動拡大を図るための事例研究」
―感覚の使い方との関連を中心に―