第1章 教育行政の概観
教育を取り巻く諸情勢の変化や課題等を踏まえ、新世紀を
展望した新たな視点に立った「第4次福島県長期総合教育計画」
に基づき、その基本目標である「新世紀ふくしまを担う
『明るく個性豊かな人間の育成』」の実現に向け、平成7年度
は国の文教施策の動きや県政の方向及び社会のニーズ等に十
分配慮し、県民の期待に応え得る教育行政の推進に努めた。
この間、平成7年10月19日付けで、福島県教育委員会委員長
には、吉田彌(ひさし)氏が就任され、委員長職務代理者
には阿部乙之(おとゆき)委員が選任された。
県教育行政において特記すべき事項としては、次の四点を
挙げることができる。
第一は、県のシンボル事業として、また、完全国体として
開催された第50回国民体育大会「ふくしま国体」が県民総参
加の下、素晴らしい成果と大きな感動を得て終了したことで
ある。また、国体終了後に「第31回全国身体障害者スポーツ
大会」が実施され、交流の輪を広げた。さらに、同時開催の
「スポーツ芸術」では小中学生の壁画展など、多くの芸術文
化事業を実施して国体等を華やかに彩った。
第二には、今日の国際化への対応として策定された
「ふくしま国際化対応教育推進プラン」を基盤に、海外との地域間
交流を推進したことである。その一環として中国湖北省教育
委員会との間で、教師代表団の相互訪問・生徒の相互派遣・
児童生徒の書画展の開催及び両県省学校間の姉妹校締結を内
容とする具体的な事業に着手するという同意書に調印した。
また、本県とカナダのブリティッシュコロンビア州の中・高
校生が研修や交流を通じて教育・文化・生活習慣などについ
て理解を深め、両県州の将来にわたる交流を築く目的で本県
の中・高校生が現地の学校などを訪問した。その他、情報化
への対応としては「ふくしま情報教育推進計画」も基づき、
教育センターにソフトウェアライブラリセンターを設置し、
学校の情報教育を計画的、総合的に支援することとした。
第三は、県民の生涯学習活動を支援する身近なシステムと
して、効果的な情報提供サービスを行う、生涯学習情報提供
システム"ふくしまマナビィネット"の全県へのネットワー
クの拡充である。その結果、7年度末までにネットワーク参
加市町村は全体の83%にあたる75を数えた。
第四は、高校教育改革の推進である。現在、情報化・国際
化などの社会の変化や生徒の多様化に対応した魅力ある学校・
学科づくりを進めているが、平成7年度は数理科学科、
デザイン科学科、環境システム科、国際経済科、経営情報科、
マネジメント会計科、オフィス情報科、ビジネス会計科、
海洋科の9学科を6校に新設した。さらに、共学化については、
福島商業高校、福島西女子高校、福島東高校、須賀川高校普通科、
須賀川女子高校の5校を共学にし、あわせて、福島西女子高校
は福島西高校に、須賀川女子高校は須賀川桐陽高校
と校名を変更し、小名浜水産高校は海洋科の設置等もあり、
いわき海星高校と校名を変更した。
以上のほか、教育行政の主要な動きは次のとおりである。
1 生涯学習関係
(1)生涯学習のまちづくりを全県的に推進するため、「生涯
学習モデル市町村事業」を継続実施し、市町村における生
涯学習推進体制の整備に努め、7年度末には75市町村に推
進組織が整備された。
(2)学校週5日制が月2回に拡大したことを踏まえ、生涯学
習の振興と子供たちの豊かな人間形成を目的とする毎月第
2土曜日の「ふくしま・フレッシュ・ふれあいデー・(3F
デー)」の普及啓発に努めた。
(3)乳幼児期から青少年にいたる家庭の実態に応じた家庭教
育が、社会状況の変化に対応し行われるよう、
「『のびゆく福島っ子』家庭教育充実事業」を実施した。
(4)不登校の児童生徒に対し、不登校の回復援助をねらいと
した学校適応サポートプラン「青少年自然体験活動推進事業」
に取り組んだ。
(5)ボランティア活動を生涯学習の観点からとらえ、活動を
希望する人々に対し、活動の機会や場を提供すると共に、
成果を地域社会に還元するなど、地域住民が活動しやすい
環境づくりを行う「"うつくしま、ふくしま。"ふれあいボランティア推進事業」
の拡充に努めた。
(6)「女性の生涯学習促進総合事業」により、男女共同参画
社会の形成を目指した。
(7)図書館サービスの向上を図るため、県立図書館業務の電
算化を推進し、市町村立図書館等との図書館情報ネットワ
ークの構築を図る「図書館情報ネットワーク推進事業」の
システム設計を実施した。
2 義務教育関係
(1)県内7地区に1市町村の中学校学区単位を基本とする
「学力向上推進地域」を指定し、国語、算数・数学、英語
を中心とした研究を進める「小・中学校基礎学力向上推進事業」
を推進し、新しい学力観に基づく授業での基礎的・
基本的内容の定着を目指して、小・中・高等学校における
教科指導の一貫性を図りながら、教育内容・方法の向上を
図った。
(2)環境教育推進事業の充実を図り、環境教育推進モデル校
に小学校2校と中学校1校を指定し、環境教育の在り方の
研究を進めた。また、環境教育に対する教員の指導力の向
上を図った。
(3)児童生徒(7年度は中学生)の交流を深める
「『尾瀬サミット』小・中学生3県交流」(福島、群馬、新潟)を実
施し、次世代を担う子どもの環境観の育成に努めた。
(4)不登校の児童生徒への対応策としての「学校適応サポー
トプラン事業」の充実のために、カウンセリング研修会な
どを実施して、教育相談体制の充実に努めた。
(5)新規事業として、いじめ問題の解決を図り、その発生の
未然防止に努めるため、「いじめ問題対策事業」を実施し、
いじめ防止用のポスターを作成し各学校に配布した。また、