第1章 教育行政の概観
教育を取り巻く諸情勢の変化や課題等を踏まえ、新世紀を
展望した新たな視点に立ち策定した「第4次福島県長期総合教育計画」
に基づき、その基本目標である「新世紀ふくしまを担う
『明るく個性豊かな人間の育成』」の実現に向け、平成
8年度は7月の中央教育審議会の第一次答申をはじめとし
た国の文教施策の動きや県政の方向及び社会のニーズ等に十
分配慮し、県民の期待に応え得る教育行政の推進に努めた。
この間、平成8年10月19日付けで、福島県教育委員会委員
長には、阿部乙之(おとゆき)氏が就任され、委員長職務代理
者には二瓶義春委員が選任された。
県教育行政において特記すべき事項として、次の四点を挙
げることができる。
第一は、「ふくしま国体」を契機として、県民のスポーツ
ヘの関心が高まりを見せる中で、競技力の維持向上を図る競
技スポーツの振興とともに、県民がいつでも、どこでも、だ
れでもが目的に応じて気軽にスポーツに親しみ、「スポーツある人生」
として健康で明るい生活が送れるよう、生涯スポー
ツのより一層の推進を図ったこと。
第二は、様々な分野における国際化への対応を推進するた
めに策定された「ふくしま国際化対応教育推進プラン」を基
盤に、海外との地域間交流を具体的に推進したことである。
その一環として中国湖北省教育委員会との間で、教師と生徒
の相互派遣・児童生徒の書画展の両県省開催に着手した。ま
た、本県とカナダのブリティッシュコロンビア州の中・高校
生が相互にホームステイ等を通して教育・文化・生活習慣な
どについての理解を深め、両県州の将来にわたる交流を築く
目的で本県の中・高校生が現地の学校などを訪問し、テーマ
研修等の有意義な研修活動を実施した。その他、情報化への
対応としては「ふくしま情報教育推進計画」に基づき教育セ
ンターにソフトウェアライブラリセンターを開所し、運用の
充実を図り学校の情報教育を計画的、総合的に支援したこと。
第三は、県内で第4番目の青少年教育施設「福島県いわき海浜自然の家」
が7月にいわき市にオープンしたことである。
海浜型の自然の家で、太平洋を望む約37haの敷地の中に550
名収容の宿泊施設、遊歩道、自然観察園、多目的広場等を整
備している。児童生徒に自然体験の機会を提供することはも
とより、地域との交流や親子のふれあいを図る観点から青少
年団体や家族の受け入れに十分配慮するとともに、身体の不
自由な方の利用も考慮した施設の特色が十分生かされるよう
運営に努めていること。
第四は、高校教育改革の推進である。まず、全校に40人学
級編制の措置を講じたことがあげられる。また、情報化・国
際化などの社会の変化や生徒の多様化に対応した魅力ある学
校・学科づくりを進めている中で県内初の総合学科高等学校
として「光南高等学校」、県内二番目の全日制単位性高等学校
として「あさか開成高等学校」をスタートさせたこと。さ
らに、学科転換では郡山商業高等学校の商業科4学級を、国
際経済科2学級と流通経済科2学級にするなど4校8学級で
実施し、共学化では、郡山高等学校の英語科を行った。
以上のほか、教育行政の主要な動きは次のとおりである。
1 生涯学習関係
(1)生涯学習のまちづくりを全県的に推進するため、「生涯
学習モデル市町村事業」を継続実施し、市町村における生
涯学習推進体制の整備に努め、8年度末には84市町村に推
進組織が整備された。
(2)県民の生涯学習活動をサポートする身近なシステムとし
て、効果的な情報提供サービスを行えるよう、生涯学習情
報システム"ふくしまマナビィネット"の全県へのネット
ワークの拡充に努め、8年度末までにネットワーク参加市
町村は79となった。
(3)県民の生涯学習活動の促進と「ふくしま・フレッシュ・
ふれあいデー(3Fデー)」の一層の普及・啓発を図るた
め、「学び、響き合う交流圏の実現をめざして」をテーマ
に平成8年10月22日に会津若松市で
「第3回生涯学習ふくしまフェア」を開催した。
(4)不登校の児童生徒に対し、不登校の回復援助をねらいと
した学校適応サポートプラン「青少年自然体験活動推進事業」
に取り組んだ。
(5)児童生徒がウィークエンド等に学校その他の身近な施設
を利用して、遊んだり学習できる機会と場の開発等を図る
ウィークエンド・サークル活動推進事業を実施した。
(6)ボランティア活動を生涯学習の観点からとらえ、活動を
希望する人々に対し、活動の機会や場を提供すると共に、
成果を地域社会に還元するなど、地域住民が活動しやすい
環境づくりを行う「"うつくしま、ふくしま。"ふれあい
ボランティア推進事業」の拡充に努めた。
(7)「女性の生涯学習促進総合事業」により、男女共同参画
型社会の形成を目指した。
(8)図書館サービスの向上を図るため、県立図書館業務の電
算化を推進し、市町村立図書館等との図書館情報ネットワ
ークの構築を図る「図書館情報ネットワーク推進事業」の
システム設計を実施した。
2義務教育関係
(1)新しい学力観に立つ基礎学力を身につけた児童生徒の育
成を目指し、県内7管内に中学校区を単位とする
「小・中学校学力向上推進地区」を設置し、国語、算数・数学、
英語を中心とした研究実践の推進に努めた。
(2)「T・T方式推進モデル地区」を県内14地区に設定し、
個に応じた指導や習熟の程度等に応じた指導の充実を図る
ための実践研究に取り組み、教育方法の向上を図った。
(3)登校拒否児童生徒への対応策としての「学校適応サポー
トプラン事業」を実施し、カウンセリング研修会の充実や
専任の巡回面接相談員による教育相談体制の充実に努めた。
(4)いじめ問題の解決やその発生の未然防止に努めるため
「いじめ問題対策事業」を実施し、各教育事務所に学校ア
ドバイザーとして臨床心理士等の専門家を配置し、フリー