教育年報1997年(H9)-001/258page
第1章 教育行政の概観
平成9年度は中央教育審議会の第二次答申をはじめとした
国の文教施策や県政の方向及び社会のニーズ等に配慮し、県
民の期待に応え得る教育行政の推進に努めた。この間、平成
9年10月17日付けで、福島県教育委員会委員長には、二瓶義春氏
が互選され、委員長職務代理者には小口潔子委員が選任
された。県教育行政において特記すべき事項としては、次の
四点を挙げることができる。
第一は、様々な分野における国際化への対応を推進するた
めに策定された「ふくしま国際化対応教育推進プラン」を基
盤に、海外との地域間交流を具体的に推進したことである。
その一環として中国湖北省教師代表団と本県の教師代表団の
相互派遣、本県の中・高校生がカナダのブリティッシュコロンビア州
のホームステイ等を通して教育・文化・生活習慣な
どについての理解を深めるとともに、現地の学校などを訪問
し、テーマ研修等の有意義な研修活動を実施した。また、
ニュージーランドから本県初のスポーツ国際交流員を招致したほか、
ニュージーランドに高校陸上競技の中・長距離選手14名を派
遣し、スポーツ科学に基づいたトレーニング方法を学びなが
らスポーツを通して交流を深めたこと。
第二は、平成12年夏の開館に向け、水族館の機能を中心と
して海洋を多角的視点から紹介し、海に関する文化・学習機
会を提供する「海洋文化・学習施設(仮称)」の建設工事に
着手したほか、埋蔵文化財等の調査・研究、収蔵・管理、公
開・活用及び埋蔵文化財専門職員研修等のための拠点施設で
ある「県文化財センター白河館(仮称)」の基本設計を策定
したこと。
第三は、第4次福島県長期総合教育計画に沿って、これま
での改革を継続しながら、新世紀ふくしまを担う「明るく個
性豊かな人間の育成」のため、本県の高等学校教育の充実に
向け、平成9年6月23日に「県立高等学校改革計画第一次ま
とめ」を公表したことである。また、社会の変化や生徒の多
様化に対応した魅力ある学校・学科づくりを進めている中で、
総合学科高等学校として新たに「安達東高校」と
「双葉翔陽(前双葉農業)高校」をスタートさせたこと。さらに、学科
改編は福島明成(前福島農蚕)高校、船引高校、平商業高校
の3校18学級で実施し、男女共学化では、白河高校と
白河旭(前白河女子)高校を行ったこと。
第四は、県民のスポーツヘの関心が高まりを見せる中で、
一定地域を母体としてジュニア層(中・高校生)を対象に強
化合宿や研修会を開催し、一貫した指導体制の構築を目指し
た地域における強化拠点整備事業等を含めた競技スポーツの
振興とともに、だれでもが目的に応じて気軽にスポーツに親
しみ、「スポーツある人生」として健康で明るい生活が送れ
るよう、生涯スポーツのより一層の推進を図ったこと。
以上のほか、教育行政の主要な動きは次のとおりである。
1 生涯学習関係
(1) 生涯学習のまちづくりを全県的に推進するため、市町村
における生涯学習推進体制の整備促進に努め、9年度末に
は85市町村に推進組織が整備された。
(2) 県民の生涯学習活動をサポートする身近なシステムとし
て、効果的な情報提供サービスを行えるよう、生涯学習情
報提供システム"ふくしまマナビィネット"の全県へのネッ
トワークの拡充に努め、9年度末までにネットワーク参加
市町村は81となった。
(3) 家庭の教育力の向上を図るため、子供を持つ親が家庭教
育の重要性について再認識する機会として、出前講座やフォ
ーラム等を行う「親と子の心を結ぶ家庭再発見推進事業」
に取り組んだ。
(4) 不登校の児童生徒に対し、不登校の回復援助をねらいと
した学校適応サポートプラン「青少年自然体験活動推進事
業」に取り組んだ。
(5) 児童生徒がウィークエンド等に学校その他の身近な施設
を利用して、遊んだり学習できる機会と場の開発等を図る
ウィークエンド・サークル活動推進事業を実施した。
(6) ボランティア活動を生涯学習の観点からとらえ、活動を
希望する人々に対し、活動の機会や場を提供すると共に、
成果を地域社会に還元するなど、地域住民が活動しやすい
環境づくりを行う「"うつくしま、ふくしま。"ふれあい
ボランティア推進事業」の拡充に努めた。
(7) 「女性の生涯学習促進総合事業」により、男女共同参画
型社会の形成を目指した。
(8) 図書館サービスの向上を図るため、県立図書館業務の情
報化を推進し、市町村立図書館等との図書館情報ネットワ
ークの構築を図る「図書館情報ネットワーク推進事業」の
システム設計を実施した。
2 義務教育関係
(1) 県内の小・中学校児童生徒の学力の向上を図るため、
「学力向上IDプラン」を策定した。その中で、平成6年
度から実施してきた基礎学力向上推進事業の成果を全小・
中学校に普及させるとともに、個に応じた指導の充実を図
るためのT・T(ティーム・ティーチング)教員を配置す
るなど、各市町村教育委員会における学力向上推進事業へ
の支援を通して、各小・中学校における日々の授業の工夫
改善を図り、学力向上に努めた。
(2) 総合的な生徒指導施策「ハートウォームプラン」の一環
として、各教育事務所に学校アドバイザーと巡回面接相談
員を配置し、電話相談や学校等への訪問相談活動を実施し
た。また、15校の中学校に県単独事業によるスクールカウ
ンセラーを配置し、いじめ問題や登校拒否等の学校不適応
問題への指導援助の強化を図った。さらに、カウンセリン
グ研修会や教育相談専門員研修会、各種連絡協議会を開催
し、教職員や教育相談専門員の資質の向上と関係機関相互
の連携強化を図った。
(3) 環境教育推進モデル校を小学校2校、中学校1校を指定
し、環境教育の在り方の研究を進めるとともに、福島、群馬、
新潟三県の児童生徒による「尾瀬子どもサミット」を
実施し、次世代を担う子どもの環境観の育成に努めた。
3 高等学校教育関係
(1) 「学力向上サクセスプラン事業」を全日制のすべての学
校を対象として1)学習の個別化を図るためのT・T教員の
配置、2)各高校の生徒の実態に応じた進路実現のための事