レッドデータブックふくしまT 植物・昆虫類・鳥類 -058/451page
絶滅危惧T類 バラ科
ホロムイイチゴ(ヤチイチゴ) Rubus chamaemorus L. 【選定根拠】県内における生育地がごく少ない。本州では産地が多くない。福島県が国内産地の南限にあたる。
【形態】多年草で、茎や葉に刺がない。花茎は直立し2〜3枚の葉と先端に1花をつける。葉は単葉で3〜5浅裂し、扁円形、幅4〜7pで、低鋸歯縁、表面に伏毛、裏面脈上に開出毛がある。花弁は5枚で白色、長さ10〜15o。果実はキイチゴ状果で径約12o、赤熟する。
【分布】北半球の寒帯に広く分布する。日本では北海道、東北(青森、岩手、宮城、秋田、福島)の湿原に生える(Naruhashi & Satomi1972, 1973)。福島県の赤井谷地が国内産地の南限に当たる。
【県内の分布、生育状況】会津の赤井谷地および雄国沼で見られる。今回の調査では減少は見られなかった。
【生育に影響を与えている要因】産地局限
【特記事項】産地である赤井谷地や雄国沼の植生全体の適切な保全を行えば、当面は本種も保護できると考えられる。ただし、分布の南限に当たるため、温暖化が進むと生育に深刻な影響を受ける可能性がある。
【主要文献】
Naruhashi, N. and N. Satomi.1972. The distribution of Rubus in Japan.1. Distribution maps.Ann. Rep. Bot. Gard. Fac. Sci. Univ. Kanazawa 5:1-21.
Naruhashi, N. and N. Satomi.1973. The distribution of Rubus in Japan.2. Some notes onthe distribution. Ann. Rep. Bot. Gard. Fac. Sci. Univ. Kanazawa 5:1-21.
絶滅危惧T類 バラ科
ミヤマフユイチゴ Rubus hakonensis Franch. et Sav. 【選定根拠】@全ての個体群で個体数が減少
【形態】つる性の常緑低木で、茎に細い刺と細毛がある。葉は単葉で卵形または広卵形で3〜5浅裂、急鋭尖頭、長さ5〜10pで、細鋸歯縁、表面と裏面の脈上に伏毛がある。花は数個が腋生または頂生の総状花序に生じる。花弁は白色で長さ4〜5o。果実は球形のキイチゴ状果で径約9o、初冬に紅熟する。よく似たフユイチゴやコバノフユイチゴは茎に毛を密生し、葉は円頭または鋭頭である。
【分布】日本固有で本州(福島県と新潟県以南)、四国、九州に分布する。福島県は太平洋側北限である。
【県内の分布、生育状況】浜通りのいわき市の数カ所で見つかっている(堀1992)。川岸に近い管理の行き届いたスギ植林の林床に生えている場合が多い。
【生育に影響を与えている要因】産地局限
【特記事項】生育地であるスギ植林を適切に管理し、生育環境を良好に維持することが望ましい。
【主要文献】
堀富雄.1992.福島県新産植物と稀産植物の新産地.フロラ福島10:23-29.