レッドデータブックふくしまT 植物・昆虫類・鳥類 -325/451page
口付近にグンバイトンボが生息しているのも特徴のひとつである。
一方、会津地方は、比較的寒地性のトンボが多く、特に尾瀬ヶ原一帯にはカラカネイトトンボ、ルリイトトンボ、ホソミモリトンボ、ムツアカネといった高山性のトンボを産する。さらに、会津若松市赤井谷地や、磐梯町法正尻湿原を含む猪苗代湖北西岸周辺の湿地や沼には、カラカネイトトンボ、コバネアオイトトンボ、オオトラフトンボ、ハネビロエゾトンボ、マダラヤンマ、マダラナニワトンボといった全国的に珍しい種が多数生息していることも特徴的である。
中通り地方ではトンボの生息に適した沼や河川が浜通りや会津ほど多くなく、特に平野部では特徴的なトンボは少ない。そのような中で、梁川町と郡山市で記録のあるナゴヤサナエは特筆される。本種は宮城県から福島県にかけての阿武隈川流域に生息しているが、生息場所は限られている。
以上のことをふまえ、本県レッドリストとしてトンボ目からは絶滅危惧種T類4種、絶滅危惧種U類2種、準絶滅危惧種7種、未評価種3種を選定した。
2)カメムシ目
カメムシ目というと、あの臭いにおいを出すカメムシだけが含まれる分類群と思われるであろうが、この分類群はカメムシの他、多くの種類を含む。この目は、細長い口吻となった吸収型口器を持つ。変態は不完全変態であるが、一部のカイガラムシで完全変態が見られる。
この目は通常ヨコバイ(同翅)亜目とカメムシ(異翅)亜目に分けられる。ヨコバイ亜目は角質部のない膜状の翅を持つ。カメムシ亜目は前翅の基部が角質化して半翅鞘となり、それより先の部分が膜質となる。ヨコバイ亜目には、ウンカ、ヨコバイ、ハゴロモ、セミ、ツノゼミ、アワフキ、キジラミ、コナジラミ、アブラムシ等が含まれる。カメムシ亜目にはカメムシ、トコジラミ(ナンキンムシ)、アメンボ、タイコウチ、ミズムシ、コオイムシ、ナベブタムシ、マツモムシ等が含まれる。
カメムシ目の食性は多様で、植物体から汁液を吸収するもの、昆虫や小動物などを捕らえて体液を吸収するもの、鳥獣に外部寄生して吸血するものなどがある。植物体から吸汁するものには、農業害虫が多く含まれるが、一方、昆虫や小動物の体液を吸収するものには、有益な天敵として働くものも少なくない。生息場所は地上や植物上のあらゆる場所や、水面、水中に及び、ウミアメンボのように海上で生活するものもいる。
「レッドデータブックふくしま」の作成にあたっては、カメムシ目全てにわたっての調査は困難なため、全国版レッドデータブックで絶滅危惧U類となっているタガメ、準絶滅危惧のコオイムシ、コバンムシについて調査を行った。調査は県内各地の池、水路、水田内等で行った。また、タガメ成虫は灯火に飛来するため、街灯等の灯火も調査した。調査期間以前については文献等による記録を調査した。
3)コウチュウ目
コウチュウ目は昆虫類の中でも大きなグループで、様々な環境に適応して繁栄している。今のところ判明している種類数は、全世界で37万種であるが、実際には1,000万を超える種が存在するという推定もある。佐々治ら(1998)によると、日本のコウチュウ目の種数は1万600種となっており、現在でも新種が続々と記載され、さらに増加する傾向にある。
調査の進んでいる都道府県ではコウチュウ目の種類数が4,000種を超えているにもかかわらず、福島県では調査がおくれているため、その正確な種類数を提示することは困難であるが、今のとこ