レッドデータブックふくしまT 植物・昆虫類・鳥類 -331/451page
絶滅危惧T類 コンチュウ目 オサムシ科
スリカミメクラチビゴミムシ Trechiama oopterus S.Ueno 全国カテゴリー;絶滅危惧T類【選定根拠】A全ての生息地で生息条件が悪化
【形態】体長は5o前後。体色は黄褐色で半透明。このTrechiama 属は、近似種が非常に多く知られており、県内でも本種の他に9種の分布が確認されている。
【分布】今のところ、基準産地である福島県福島市飯坂町の烏川林道と中津川渓谷から見つかっているだけである。主に地下浅層に生息していると思われる。
【生息に影響を与えている要因】上野(1995)により、福島市摺上川上流域で得られた個体をもとに記載された固有種で、基準産地がダムの下に沈んでしまうため、全国版で絶滅危惧T類に選定された。その後上野(2001)により、摺上川の支流である中津川流域での生息も確認されたが、生息域の多くがダム建設により失われてしまう。
【特記事項】基準産地がダムの下に沈んでしまうため、ダムに水没しない基準産地周辺地域で、本種の発見が望まれる。なお、中津川流域での本種の調査時に、同属の別種モニワメクラチビゴミムシが摺上川の対岸から発見されたが、それほど広くない川を挟んで2種が生息していることは珍しく、学術的に非常に貴重な例である。
【主要文献】
上野俊一(1995)布引山地とその周辺地域のナガチビゴミムシ属甲虫類.国立科学博物館専報,(28):147-163.
上野俊一・西川喜朗(2001)東北地方で見つかったナガチビゴミムシ属の1新危急種,ELYTRA,29(1):249-256.
絶滅危惧T類 チョウ目 シジミチョウ科
ゴマシジミ Maculined teleius Bergstra¨sser 全国カテゴリー;絶滅危惧U類【選定根拠】D過去(30〜50年)の生息確認後、情報なし
【形態】本種は、地域変異と個体変異が著しく、日本産のチョウの中で最も変化に富んでいる種であり、多くの亜種に分類されている。本種の幼虫はバラ科のワレモコウの花芯を食べて育ち、終令幼虫になるとシワクシケアリの巣に入り成長する。体から分泌液を出しアリに与え、自らはアリの幼虫を食べて育つ。
【分布】国内では北海道、本州、九州に分布する。福島県の周辺では、群馬県、新潟県、北では青森県、岩手県で記録がある(秋田県でも記録があるが、疑問視されている)。国外では、中部ヨーロッパから中央アジアを経て極東地域まで広く分布している。
【県内の分布、生息状況】県内では双葉郡浪江町において1960年8月の採集記録がある。また、石川町でも記録されているというが、その標本が現存しないため、その真否は不明である。
【生息に影響を与えている要因】草地開発
【特記事項】幼虫の餌であるワレモコウとシワクシケアリの両方が揃う環境の保全が望まれる。本種は個体変化も大きく、また地方変異もあり、多くの亜種に分かれている。県内産のものに関しては、採集個体数が少なく、亜種の特定は困難なため亜種名の記載はしない。
【主要文献】
田添京二(1974)福島県のゴマシジミとヒョウモンモドキ.昆虫と自然,9(11):32-33.
斎藤修司(1997)阿武隈山地のゴマシジミは今.ふくしまの虫,(15):38-42.
矢吹繁美・角田三枝子(1976)石川に生息する蝶類について.こつばめ,(3):23-27.