レッドデータブックふくしまT 植物・昆虫類・鳥類 -355/451page
準絶滅危惧 チョウ目 ジャノメチョウ科
ベニヒカゲ
Erebia niphonica niphonica Janson 全国カテゴリー;準絶滅危惧【選定根拠】b 分布域の一部で生息条件悪化
【形態】北海道では平地にも産するが、本州では高山の代表的な蝶の一種である。ミヤマワタスゲなどの自生する雪田草原を棲み家とし、オゼソウなど白系統の花で吸蜜する。飛翔は緩慢で生息地を離れることはないが強風で飛ばされることもある。雌雄の斑紋は酷似するが、雌は前翅赤紋内の黒班の中央に小白班があり、雄との区別は容易である。雄ではまれに翅表の赤紋を欠く個体もあり、飯豊山からの出現率が高い。
【分布】国内では、北海道・本州に分布。本州では1500m以上の高所に生息。国外では朝鮮、サハリン等に分布する。
【県内の分布、生息状況】県内では飯豊山が唯一の産地。過去に燧ケ岳の記録もあるが誤報であることが判明、報告者により正式に取り消された。本種の生息域は広大な雪田草原を持つ高所で御神楽山塊にも生息の可能性はある。成虫の発生は飯豊本山が最も早く8月上旬、三国岳では9月に新鮮な個体を見ることがある。
【生息に影響を与えている要因】踏みつけ雪田の荒廃
【特記事項】本亜種は17亜種に分類名をもつ種であるが、飯豊山の本種は変異幅が大きく原名亜種。本種を産する国内の高山は自動車道、ケーブルカー等を敷設し登山の簡便化が図られている。飯豊山はこれらの施設はないので本種にとっては幸いであるが、雪田草原の環境の維持を図り、発生地を保護するのが望ましい。
【主要文献】
斎藤修司(1986)山都町で分布が確認できた蝶類96種.福島生物,(29):21-28.
中谷貴寿(1987)東北地方のベニヒカゲ雑記(4).蝶研フィールド,2(1):25-31.
中谷貴寿・北川朝生(2000)東北地方のベニヒカゲの生息環境T.蝶と蛾,51(4):255-274.
中谷貴寿・北川朝生(2001)東北地方のベニヒカゲの生息環境U.蝶と蛾,52(4):293-308.
準絶滅危惧 チョウ目 ジャノメチョウ科
ウラジャノメ Lopinga achine achinoides Butler 【選定根拠】b 分布域の一部で生息条件悪化
【形態】翅の色は全体的に黄褐色で表の亜外縁には楕円形の黒色紋を配している。裏面は表の黒色紋に対応して眼球紋が並ぶ。雌の裏面はこの眼球紋の内側の白色帯が発達する傾向が強い。
【分布】国内では、北海道、本州。国外では、ヨーロッパから北、中央アジアを経てシベリア、朝鮮半島まで広く分布。
【県内の分布、生息状況】県内では阿武隈山地、奥羽山脈の南部地域、南会津の山地に分布する。山頂部に集まるものや、山麓の落葉林の縁を飛翔するものが記録されている。
【生息に影響を与えている要因】森林伐採
【特記事項】発生地を早急に掌握し、環境の大規模な変化が起こらないようするのが望ましい。
【主要文献】
有賀俊司(1991)ウラジャノメ採集記.おけら,(57):45-47.
郡司正文(1998)阿武隈山地におけるウラジャノメの新産地.ふくしまの虫,(16):58.
小林潤一郎(2000)館岩村でのカラスシジミとウラジャノメの記録.ふくしまの虫,(19):45.
塩田正寛(1964)会津駒ケ岳の蝶類.インセクト,14(2):2-5.
水野谷昭三(1998)南会津地方および県南地方の蝶3種について.ふくしまの虫,(16):57-58.