レッドデータブックふくしまU 淡水魚類/両生類・爬虫類/哺乳類 - 031/122page
ンショウウオは、流水中に生息し産卵するため、奥地の渓谷などに多く、将来とも安定した生息環境が保たれると思われる。イモリの場合、以前は普通の水田に多く生息していたが、近年、水田ではほとんどみられなくなり、溜め池などで確認されることが多くなっている。
カエル目12種の中でトウキョウダルマガエルとトノサマガエルの分布状態には不明な点が多い。環境庁が1978年に実施した第2回環境基礎調査では、トウキョウダルマガエルが全県的に分布しており、トノサマガエルは会津地方の山形県や新潟県との県境に分布しているとされていたが、今回の調査で一部中通り地方を含む分布が推察される結果となった。また、両種の交雑個体も他県で確認されていることから、さらに詳細な細胞遺伝学的調査研究が望まれる。ツチガエルは農業手法の変化により、平地から山間部に生息場所を移動し、生息数の著しい減少が心配されている。モリアオガエルはその産卵場所の特異性によってよく知られているが、豊かな森林の中の池沼の存在が生息条件である。奥会津の尾瀬では、標高1,750mまで生息し、浜通りの双葉郡川内村の平伏沼は、国指定の天然記念物となっている。ウシガエルは、1917年ごろにアメリカより食用として移入され、養殖場などから逃げ出したものが県内にも広く分布している。
カメ目4種の中でアカウミガメは、環境省レッドリストで絶滅危惧U類となっており、いわき市の海岸は日本における産卵場所の北限とされている。また、今回情報が少なかったイシガメやクサガメについては、本県で生息を確認しているが、ペットとして飼われていたものが逃げ出した個体の可能性もあり、生息確認場所全てが自然分布と断定はできない。アカミミガメは県内でも確認されているが、帰化動物であり、イシガメやクサガメなど生態が類似した種にあたえる影響が危惧されるところである。
トカゲ・カナヘビのトカゲ目トカゲ科2種は、両種とも県内広域に数多く生息している。ヤモリについては過去に梁川町といわき市、双葉町で確認された例があるが、いずれも単発の情報であり、木材などに紛れ、人為的に運ばれたものと考えられる。
トカゲ目ヘビ科の7種については、生息の確認手法が確立していないため、情報が少ない傾向にあり、今後も情報収集すべき種類と考えられる。
両生・爬虫類は特に水環境との関係が深く、水環境によって、その生息場所や生息数が大きく影響を受けている。すぐれた自然、自然度の高い場所により多く生息しており、水環境指標動物とも考えられる。生物多様性保護のため、自然の保護に努めなくてはならない。20世紀に破壊し続けてきた自然の修復や復元が21世紀の大きな課題となっている。
2 調査方法
本調査は、ふくしまレッドデータブック作成検討委員会両生・爬虫類分科会で内容を検討し、福島県自然保護協会によって行われた。
1)調査組織
福島県自然保護協会の事務局が調査員事務局となり、県内の会員が調査員として、相双、いわき、県北、県中、県南、会津、南会津の7地区ごとに分担し、現地調査を実施した。特に調査が不十分な地区は、宿泊合同調査を実施した。さらに詳細な調査が事務局員によってなされた。
なお、調査の精度を上げるため調査員研修会、地区ごとの現地調査研修会を実施した。