レッドデータブックふくしまU 淡水魚類/両生類・爬虫類/哺乳類 - 046/122page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

を広げ、浜通り地域でも生息が確認されている。

ウシ目では、イノシシ科のイノシシ、シカ科のニホンジカ、ウシ科のニホンカモシカの合計3種である。ニホンジカは「第2回自然環境基礎調査」(福島県,1979)では絶滅したとの報告がなされていたにも拘わらず、近年尾瀬地域を中心に会津地域で生息が確認されている。最近の尾瀬地域ではほぼ全域でニホンジカのフィールドサイン、湿原植生の撹乱、池塘の撹乱などが観察され、今後のニホンジカの動向が気になるところである。なお、福島県内の越冬地に関しては現在調査中である。イノシシに関しても、「第2回自然環境基礎調査」(福島県,1979)では阿武隈川の東側での生息が確認されており、最近は農作物への食害も増加し、分布においても西側の会津地域へ拡大する傾向がみられる。

特別天然記念物のニホンカモシカに関しても、会津地域から中通り地域にかけては、農作物への食害が報告されており、浜通り地域へも生息域が拡大する傾向が見られる。また、カモシカに関しては文化庁により全国に15の保護地域の設定が計られていて、福島県関係では朝日・飯豊山系と越後・日光・三国山系にカモシカ保護地域の設定が計画されている。

ネズミ目では、リス科のニホンリス、ホンドモモンガおよびムササビの3種、ネズミ科のヤチネズミ、スミスネズミ、ハタネズミ、カヤネズミ、アカネズミ、ヒメネズミ、ドブネズミ(対象から除外)、クマネズミ(対象から除外)およびハツカネズミ(対象から除外)の9種、ヤマネ科のヤマネ、ヌートリア科のヌートリア(対象から除外)の合計14種で対象は10種である。このうちホンドモモンガ、スミスネズミ、カヤネズミおよびヤマネの確認例は極めて少なかった。特にスミスネ
ズミに関しては、安達郡大玉村の安達太良山系が現在の分布の北限であるが、最近は生息情報がない。また、宮城県丸森町の阿武隈川河川敷がカヤネズミの成獣が確認された太平洋側の最北地であるが、今回新たにカヤネズミの成獣が確認された原町市新田川河口が海岸部での最北地となる。

ウサギ目では、ウサギ科のノウサギ1種だけである。全国的に新たな造林地が少なくなり餌場が少なくなったことから、生息個体数は減少傾向にあると考えられているものの、今回の調査では各地に設置した赤外線センサーカメラで撮影されており、生息数が極端に減少しているとは考えられなかった。

2 調査手法

「レッドデータブックふくしまU 哺乳類」をまとめるにあたり、ふくしまレッドデータブック作成検討委員会哺乳類分科会で調査内容等を検討し、効率よく生息情報を得るために、現地調査、文献調査、聞き取り調査を実施した。調査は県から委託を受けて福島県野生動物研究会が実施した。

現地調査地には福島県内全域を対象としたが、これまで調査をしていない日光国立公園尾瀬特別保護地域を中心とした自然公園内を重点的に調査した。なお、コウモリ類やモグラ類などは種の同定のために外部形態や頭骨の測定が必要になることもあり、将来の研究のためにも標本を残すこと
を前提に調査を行った。その他、比較的同定が容易なツキノワグマなどの大型哺乳類やニホンザルやタヌキなどの中型哺乳類については、調査員による目撃情報を収集した。

また、哺乳類には夜行性の種や人間を忌避する種も多く、効率的に調査を進めるためには自然に詳しい自然公園指導員や
鳥獣保護員および林業関係者からの聞き取りを行い、必要に応じて現地調査を実施する方法を採用した。文献調査で確認された生息地でも原則的に再度現地調査を実施し、生息の有無や生息数などの年次的な変動を確認した。

なお、調査に必要な許認可等の手続きは福島県が実施した。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県生活環境部環境政策室自然保護グループに帰属します。
福島県生活環境部環境政策室自然保護グループの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。