レッドデータブックふくしまU 淡水魚類/両生類・爬虫類/哺乳類 -075/122page
地や植生が影響を受けていることから、同法の施行令では、区域を指定し、自動車等の乗り入れの規制を行うことができる規定が設けられているが、指定区域は河川区域内に限定される。
海岸法は、防災機能の向上を目的とした法律であったが、平成11年に河川法と同様の法改正が行われ、従来の目的に加え、海岸環境の整備と保全が位置づけられた。改正法では、海洋性レクレーションの影響による動植物の生息・生育地破壊などの問題に対応するため、区域を指定して、自動車の乗り入れ規制を行うなど自由利用の一部制限が可能であるが、指定区域は海岸保全区域及び一般公共海岸区域内に限定される。
キ 植物防疫法
本法は、農産物に対する被害の防止を目的とした法律であり、農業に有害な動植物の輸入は規制されるが、農業生産に影響を及ぼさない動植物については、規制措置がとられておらず、生態系への影響という観点から規制措置を講ずることはできない。
(4)希少野生生物保護の今日的な意義及び必要性
野生生物は、人間にとって生活に不可欠である重要な資源であるとともに、地域に根ざした文化の根源ともなってきた。また、野生生物は限りのある資源であり、将来にわたり自然の豊かな恵みを享受し、人間が健康で文化的な生活を送っていくためには、これまでの経済活動を優先させる姿勢を見直し、持続可能な範囲内での利用を図りながら、野生生物をとりまく生態系の保全を行うことが今日的な課題となっている。
「ふくしまレッドリスト」で絶滅危惧T類のコクラン、絶滅危惧U類のベニシュスランなどの主な生育地については、既存の保護制度のみでは保護の対象とならず、効果的な保護対策の実施が困難な状況にある。このほかにも、「ふくしまレッドリスト」には、既存の保護制度では対応が困難である野生生物が数多くリストアップされており、これらの絶滅のおそれのある種の保護はとりわけ緊急に進めるべき課題となっている。
今後、有効な保護対策が講じられない状況が続けば、生息・生育環境の悪化により絶滅への道をたどる野生生物の増加、ひいては貴重な生物多様性の喪失が懸念される。これらのことから、既存法令の積極的な運用を図るとともに、本県における生物多様性を保全するため、既存の規制の対象外となっている種をカバーできる保護対策を早期に実施することが求められている。
本研究会では、本県における野生生物をとりまく厳しい現状を踏まえ、将来にわたる生物多様性の保持を目的として、希少野生生物の保護の基本的な考え方について取りまとめを行った。