レッドデータブックふくしまU 淡水魚類/両生類・爬虫類/哺乳類 -077/122page
このような野生生物に対する共通認識のもとに、本県の希少野生生物保護の基本的な考え方について、以下のとおり整理を行った。
(1)生物多様性の体系的保全
野生生物の基本的な認識単位は「種」であるが、野生生物は、当然ながらそれぞれの種が単独で生存するものではなく、生態系の一部として、それを構成する他の多様な種や環境要素と相互に複雑な関わり合いを持ちながら、微妙なバランスのもとに成り立っている。したがって、希少野生生物の保護については、その生息・生育地の保全を基本とし、絶滅の危険性の程度に応じた総合的、体系的施策が必要である。
ア 生息・生育地の確保と保全
希少野生生物を取り巻く環境を広く保全することが重要であるので、生息・生育地については既存の法律、条例による保護地域の設定を、それぞれの制度の趣旨を十分に踏まえて適切に推進する一方、既存制度では指定が困難な位置にあったり、既存制度では対応が困難な規制手法を必要とする生息・生育地があれば、保護のために新たな保護地域制度を創設し、保護地域内で圧迫要因となりうる開発行為や捕獲採取以外の放逐、飼育、植栽、化学物質の散布、不適切観察等の行為に対する規制措置を講ずることが有効であると考えられる。このような行為規制を設けるにあたっては、次の点について考慮すべきである。
○希少野生生物の分布状況等により、保護区内の規制内容に強弱の差をつけ区域分けをすること。
○極度に生息・生育数が減少し緊急に保護措置が必要である種については、保護地域における立入禁止をはじめ上述のようなきめこまかでかつ厳しい規制措置を講ずる必要があるが、この場合には、その種の生態等をよく勘案した上で適切な措置を選定すること。
○私有地を保護区として指定する場合は、個人の権利を制限することもあることから、損失の補償制度のあり方等について検討すること。
○希少野生生物の生息・生育地において開発行為を行う際は、事前に対象となる地域の野生生物の分布状況や野生生物を取り巻く生態系への影響を十分に調査すること。
○特に、希少野生植物の自生地付近に他から持ち込んだ同種の植物を移植する(緑化工事等)ことは、交雑による自生地固有の遺伝子のみを持つ個体が失われる遺伝子汚染が危惧されることから、関係機関相互の連絡体制を緊密にし、情報の共有化をはかる等慎重に対応すること。
イ 過剰な捕獲・採取圧のコントロール
人間による過剰な捕獲圧・採取圧が生息・生育に大きく影響を及ぼしている種のうち、生息・生