高等学校における生徒の能力・適正,進路志望等に対応した教育内容,指導方法等の研究開発について-000-01/82page

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まえがき

文部省より,教育開発に関する調査研究について3年目の研究委嘱を受けたのは,昨年の9月であった。福島県では,過去の2年間は,小学校および中学校の連携をはかる教育課程,指導方法等の研究開発であったが,本年度は,高等学校における生徒の能力・適性,進路志望等に対応した教育内容.指導方法の研究開発であった。これは,過去2年にわたる小学校及び中学校に関する研究経験があるとはいえ,高等学校の教育開発は,研究の目標も異なり,新規の分野であった。

教育課程の改訂をめぐって,学校における現行の機能とその役割が強く問われ,高等学校の教育内容や方法の改革も叫ばれている昨今の情勢に鑑み,研究の趣旨の重大さを深く認識してこれに取り組んできたが,私どもの研究に関する基本的姿勢は,いたずらに世論の改革案に耳を傾ける前に,現下の高等学校教育の実態をふまえ,その今日的課題の追求の上に改善案を考えた次第である。

教育課程審議会の中間のまとめによるまでもなく,高等学校の進学率は,今や90パーセントを越え,生徒の多面的な能力・適性,進路志望等に対応するためには,国民教育としての発想によって教育内容を編成し,それに基づく指導方法を検討するところが多くなりつつあるようだ。私どもは,生徒の能カ・適性・希望などの幅広い多様性に応ずるため,全日制普通科における教育課程のあり方,教科については,国語科及び外国語における学者単位の細分化と,必修や選択科目の履修のし方,更に,一人一人の生徒を尊重し,未来に生きようとする生活態度形成の配慮も考えて,それぞれのコースを履修するためのガイダンスを対象として研究に取り組んできた。

情報産業の急激に発達する現代社会において,あるいは,大学への進学熱の苛烈な中にあっては,高等学校教育の当面する問題は余りにも多いようである。このような状況下において,高校生自身の意欲の問題,多様な能力・適性への配慮,科目の内容と細分化及び,コースの設定と履修の方法などについては,より適切な実施方策やシステムが樹立されなければならないと思われる。しかし,これらのことは,長期的な展望に立ち,より確かなデーターによって検討改善されなければならないであろう。教育研究開発の意義もここにあるものと思われる。

委嘱をお受けして以来,限られた日数のもとで,研究同人の意識を強化して,鋭意研究を進めてきたものの,漸新な開発性をもつ提案にまでは至らなかったようである。ともあれ,私どもは,文部省教育開発室より,国の教育について,その開発性を志向するための研究の機会を与えてくださったことに対し深甚な謝意を表する次第である。

また,研究の過程において,ご協力をいただいた教育センターをはじめ,関係教育機関に厚く御礼を申し上げると共に,当局におかれては,私どもの意のあるところをおくみとりいただき,御活用いただければまことに幸いである。

昭和51年3月

福島県教育開発に関する研究会

代表 高橋幸一


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