高等学校における生徒の能力・適正,進路志望等に対応した教育内容,指導方法等の研究開発について-069/82page

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履修ガイダンスについて

1 ガイダンスの必要性

(1) 高校全入化とガイダンス

福島県の高校進学率は,昭和50年度において84.2%であり,東北において下位に属し全国的に見ても甚だしく低位にある。しかし,このような低い進学率の本県にあっても,年々高校全入の傾向を望む声は強まり,近い将来においては全国的な平均にまで高められるものと推定される。

このようなすう勢にともなって,高等学校への入学者の質はますますその差を拡げ,極めて高度な学習内容にも耐え得る者から,まったく指導内容を消化できない者まで,実に多種多彩にわたる傾向が更に強まっていくことは,明白な事実である。すなわち,高等学校の全入=近似高校義務制化は,現在中学校にあって大きな問題となっている。教育課程からの"落伍者"を高校にまで持ち込むことは火を見るより明らかであると推論できるのである。このことは,全日本中学校校長会の調査から,適確に裏付けられるものであり,特に,英語,数学,理科についてはその傾向が一段といちじるしい。

このような観点から今後の高校教育を考えてみるに,生徒の能力・適性に応じた教育のありかたが,なお一層強化されていかなければならないし,それがためには,教育課程の改善とともに能力・適性に応ずる学習を選択履習させるための適切なアドバイス,すなわちスクール・ガイダンスが現行よりも倍して実行されていかなければならない。

(2) 生涯教育と高校教育

わが国の教育体系は,単線型のそれであり小・中・高・大と一連のレールの上でおこなわれている。したがって,小学校教育は中学校の,中学教育は高校の,高校教育は大学の教育の前段階として捕えられることが多く,それぞれの学校でその時点における完成教育を実践しているとは言いきれないものがある。

上記の観点に立脚して,高校教育を眺めてみるに,確かに現在の高等学校普通科教育は,大学入試準備校,いわゆる予備校化していることは事実である。しかし,ここでもう一度冷静にこの現状はいかなる原因理由によって引き起されてきたのか,また,その打解はいかになされるべきかを熟考しなければならない。次表は,福島県の高校卒業者の進学状況を示すものである。過去6年間にわたって進学者は増加の一途をたどっているが,最も進学率の高い普通科にあっても36,4%であり,残り63.6%は高等学校が最終学校となっていることがわかる。このことから,もしかりに36.4%の生徒にのみ教育の力点が置かれ,残る過半数の生徒の教育がやや弱体化しているとすれば,量的な面からも極めて不合理であるといわなければならない。さらに,一流の大学になんにん入学させたかをもって,高等学校の学校評価,教師の評価につなげたり,高等学校の教育目標とすりかえてしまうような風潮が時に感ぜられるがこれは真の高校教育をむしばむものとして,厳に慎んでいかねばならないことがらである。


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