理科野外観察の手引びき(小・中学校編)-036/82page
これは吾妻山における理想的な植物帯の移りかわりであって,実際にはこのような状態が完全にそろってい
るわけではありません。
平地は,田畑になったり,町になつたりして,自然のおもかげはほとんどなくなっています。
亜低山帯でも,原二林が伐採されて,コナラやクリの林になったり,メキやアカマツが植林されています。
ミズナラ林は,高揚温泉から不動沢付近までみられます。助らかに二次林で,ミズナラのほかに,リョウブ・ハウチワカエデ・ヤマツツジがみられます。
低山帯(山地帯)のブナ林は,およそ標高1,500m1以下にあり,この高さは,スカイライン沿いでは北部の相当区はミスナラ林が大半を占め,ブナ林は断片的にしか残っていません。これに対し南部はまだいくらか残っています。これらはチシマザサ型ブナ林で,低木層のチシマザサ,草本層のヒメモチ・ハイイヌガヤなどがみられるのが特徴です。
亜高山帯の代表的左森林はアオモリトドマツ林で,標高1,500m以上みられます。スカイライン沿いでは,しもふり山の下から浄土平を経て双竜の辻の急坂の下あたりまでがこの範囲に入ります。しかし浄土平とその北方は一切経山の火山・活動の影響を強くうけているため自然林はみられません。
また,母岩が露出し土の浅いところにはコメツカの多い林がみられます。高山帯は,いわゆる高山植物の生育する地帯で,ここでは,たけの高い樹林は
発達できないで風当りが弱く土壌の深いところにはハイマツやガンコウランを主とする低木群落がみられ,風当りの強く土の浅い所には,コケモモやイワウメのような地面をはうような形の小低木がみられます。新しい火山では,ハイマツのほかにキタゴヨウが高山帯に侵入し,低木化した櫛型を示すことがあります。
図-40 磐梯吾妻スカイライン附近の植生図
図-41 ブナ林(磐梯吾妻スカイライン)