理科野外観察の手引びき(小・中学校編)-073/82page

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35水の色に特徴のある湖にはどんなものがあるだろうか

日本には,これ以上にきれいな湖はないといわれるほど,形や水の色の変化に特徴がある五色沼(磐梯五色沼)は,明治21年の磐梯山(当時1,840mの小磐梯)の爆発による泥の流れのくぽ地に水がたまってできたものです。そして,その数は,約80余りに達することが知られています。
五色沼は,その名の示すとおり,湖面の色は非常に変化に富んでいます。たとえば図-102にも含まれていますが,弥六沼,西柳沼,小柳沼,柳沼などは緑色をしていて,瑠(るり)沼,青沼,弁天沼などは青色をしめし、竜沼,深泥(みどろ)沼,赤泥沼は赤色をみせています。また,五色沼の入口の湖,毘沙門(びしゃもん)沼は帯赤青色に見えています。
そこで,青色をしている原因については,水が透明で,水中に青色を与えるようなイオンが溶け込んでいる(硫酸イオソのようなもの)ことがあげられています。赤色をしている原因は,鉄の沈澱物が多く含まれているものと考えられています(分析の結果によると硫酸塩や,湖底には白色のイオウや赤色の鉄,マンガンの沈澱物が多量に検出されています。
このように,五色沼は,水に含まれている固形物の量が特に多く,日本の湖の中では群をぬいています。普通は1リットル中に30mgであるのに対して,約200mgにも達しているのです。
五色沼は,このほかに,湖底の岩石の色の違いや,周囲の植物の色,空の色なども複雑に組み合って,あのような神秘的な色をみせているのです。
一方,磐梯火山の影響をかなり受けていて,水は酸性をしめし,赤沼などは,pHが3.3を示しています。深さでは,毘沙門沼が最も深く,13mぐらいになりますが,全般的には,泥流のくぼ地に水がたまったために,浅くなっています。
これらの湖は,図-102に示したように,地表の流れは,璃沼→青沼→弁天沼→竜沼→深泥沼→毘沙門沼を通って長瀬川に流れ注いでいますが,地下水も,岩石の割れ目を通って複雑につながっていると考えられています。
このようにいろんな点で特徴のある湖ですので,中に住む生物にも特殊なものが見られます。まず,ほとんどの湖岸にはヨシが繁茂しています。ヨシはpH3.3のようなところにも充分生育できるようです。


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