-野外観察の手びき-浜通りの地層と川原-008/170page

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5.常磐炭田の形成時代(古第三紀6400万年〜2600万年前)
新生代に入っても,日本列島はアジア大陸の東縁部の一部でした。当時の気候は高温多湿で植物が繁茂し,それらの樹木は,九州や北海道の炭田地帯にもうずもれて,石炭となりました。
石炭ができるためには,豊富な樹木の供給地が近くにあることと,水の流れの弱い大きな入江か湾のような場所がなければ,流木は,うずもれて炭田を形成することができないのです。このことから,逆に当時の自然環境を推定することができます。
始新世の終りごろから気温も低くなり,当時,日立市から久の浜町にかけて大きな湾形の地形ができ上っており,始新世から漸新世にかけ,湾中に海水が入ってきて,常磐炭田地域は,入江か潟のような環境になり,一方,陸地からはメタセイコア,ミリカ等の樹木が運ばれ水底に堆積しました。漸新世のはじめ頃は,水深も浅く,レキ岩,砂岩,頁岩,炭層の順に,小さい輪廻をくり返していることから,水深も一進一退を続けたことがわかります。
この炭層を含む地層は,石城來炭層(古第三紀の地層群は,下から石城爽炭層,浅貝層 白坂層に区分されている)で,本格的に海進が進んだのは,漸新世後半になって浅貝層が堆積した時代です。この地層からは貝化石がたくさい産出します。
浅貝層がよく観察できるのは勿来出蔵,錦町三沢,湯本浅貝,内郷藤棚,下小川前原,四倉海岸崖,四倉町白岩,大久新屋敷,広野町浅見川が主な場所です。主な化石は,二枚貝のクリノカルジューム,マイヤ等で,その化石から,この時期の海水は寒冷化したこと

古第三系分布略図(柳沢原図)
古第三系分布略図(柳沢原図


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