高等学校「理科1」のてびき-076/133page

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(指導資料) 16 カエルの発生

1 ねらい

発生の過程を教えるのに用いられる教材教具は、模型、掛図、スライドなどであるが、これらはいく精巧、精細なものであっても、これらのものから生徒が受ける感動は少なく従って卵の内部構造の理解にはあまり役立たない。

しかし、小さな卵の中で起こる発生の過程を生徒に観察させれば、生命現象に対する興味・関心はもちろん生命に対する尊敬の念をもたせることができる。

従来、発生の組織標本のつくり方には、パラフィン切片法があるが、パラフィンケーキつくりやミクロトーム操作などめ点で時間と技術を必要とし、一般的でない。ここにとりあげた方法は、だれでも、どこでも観察指導できる方法である。

2 準備

寒天床、柄つき針、ビーカー、シャーレ(径10cm)両刃安全かみそり、双眼実体顕微鏡

カエルの卵は市販の液浸標本もあるが、野外より採集して10%ホルマリン液で固定保存したものを使用する。卵は大きいほどよいのでヒキガエルかウシガエル(食用ガエル)がよい。

ヒキガエルの卵は寒天質のひもにつつまれて、卵塊は4mにも及び多いもので数千個の卵が入っている。したがって1回採集すれば数年分の卵が確保できる。

産卵時期はおよそ次の通りである

○ヒキガエル           2月〜4月下旬池、沼

○トノサマガエル        5月〜7月池、沼、水田、小川

○ツチガエル          6月〜7月下旬池、沼、水田

○ウシガエル(食用ガエル)  5月〜8月池、沼

福島県内でも地域によって気候が異なるので、産卵時期は一定でない。また同じ地域でも、陽のよく当る暖かいところでは産卵も早い。そのために産卵する池や沼の産卵時期を調べておく必要がある。例をあげると、西会津のある池のヒキガエルは、4月中旬に産卵しており、又福島市郊外のウシガエルは5月中旬に産卵している。不思議なもので毎年多少の差はあっても、産卵時期に大差はない。ヒキガエルの産卵期は桜の開花前を目やすとしてよい。

ヒキガエルは毎年同じ池で産卵する。子供は生まれた池にもどり産卵することが知られているので、あらかじめ情報を集めておくとよい。カエルの発生速度ははやく、初期の卵割を観察するためには、抱接中のカエルをつかまえ、水槽に水1〜2cm入れておく。数日後に産卵受精する。

トノサマガエルの発生速度(18℃)―2細胞期  受精後3時間30分

                     ―8細胞期  受精後5時間

                     ―胞胚後期 34時間

                     ―神経溝期 受精後72時間 


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