高等学校「理科1」のてびき-130/133page

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(演示実験) 13 前葉体の観察

1 ねらい

ワラビ、ゼンマイなどシダ植物を見て知っていても、その生活史(世代交代)を順を追って観察した経験をもつ生徒は殆んどいない。教科書に出ているイヌワラビの世代交代も前葉体の観察をすれば理解しやすいものと思われる。

シダ植物の進化を知るうえで重要で、特に前葉体は植物が水中生活から陸上生活へと進化適応した名残りをとどめていることでも重要である。前葉体は野外でも観察できるが、一度も見た経験のない初心者が小さな前葉体を発見することは大変むずかしい。そこで、前葉体を培養レて植物の初期発生や葉緑体、精子などを観察してその生活史の理解を深める。

培養の方法にはいろいろあるが、ここでは、管理が簡易で失敗も少ない水栽培法をとりあげた。

2 準備

(1) 胞子の採集

8月下旬より9月上旬が胞子の採集時期である。野外より胞子を採集する場合に注意しなければならないことは、胞子が飛び出し空になったシダ植物を採集しない事である。胞子が入っているかどうかの判別は顕微鏡下で確認するのがよいが、野外では、ルーペを用いて行うとよい。

シダ植物の胞子の完熟期のめやすとしては、中の胞子の色と関係なく、胞子のうが黒く色づいて光沢をもった時をえらぶとよい。胞子のついている小羽片をペーパータオルにはさみ自然乾燥する。乾燥すると胞子のうが破れて胞子はペーパータオルについている。

胞子を保存する場合は同じ種類別にポリ袋に入れ冷暗所に保存する。冷蔵庫で5℃ぐらいに保っておくと4年後も80%の発芽率をもっている。しかし、スギナやゼンマイの胞子のように葉緑体をもった胞子の発芽能力はすぐに低下するので、1週間以内に播かなければならない。

(2) 器具と薬品

小型シャーレ、ルーペ、柄つき針・検鏡用具(双眼実体顕微鏡があるとよい)、0.1%ハイポネックス液(園芸用肥料)又はクノープ液

3 方法

(1) 観察期間より逆算して2ケ月位前より胞子を播く。(図2)では20℃、1000ルックスの標準を示したが、シダの種類によってもちがうようである。胞子が発芽して前葉体になるまで2ケ月位かかるのが普通である。

(2) 培養液をよく洗ったシャーレヘ20mlずつ分注する。(シャーレは滅菌の必要はない)


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