研究資料分類基準G2-04高等学校社会科「現代社会」の研究-130/170page
関連を忘れてはならない。
日本人のもつ社会道徳の水準は遺憾ながら低い。しかも民主化されたはずの戦後の日本においてその弊が著しい。これを正すためには公共心をもち,公私の別を明らかにし,また,公共物をだいじにしなければならない。このように社会道徳を守ることによって,明るい社会を築くことに努めなければならない。○ 国民として
1 正しい愛国心をもつこと
今日世界において,国家を構成せず国家に所属しないいかなる個人もなく,民族もない。国家は世界において最も有機的であり,強力な集団である。個人の幸福も安全も国家によるところがきわめて大きい。世界人類の発展に寄与する道も国家を通じて開かれているのが普通である。国家を正しく愛することが国家に対する忠誠である。正しい愛国心は人類愛に通ずる。真の愛国心とは,自国の価値をいっそう高めようとする心がけであり,その努力である。自国の存在に無関心であり,その価値の向上に努めず,ましてその価値を無視しようとすることは,自国を憎むことともなろう。われわれは正しい愛国心をもたなければならない。
2 すぐれた国民性を伸ばすこと
世界史上,およそ人類文化に重要な貢献をしたほどの国民は,それぞれに独自な風格をそなえていた。それは,今日の世界を導きつつある諸国民についても同様である。すぐれた国民性と呼ばれるものは,それらの国民のもつ風格にほかならない。
明治以降の日本人が,近代史上において重要な役割を演ずることができたのは,かれらが近代日本建設の気力と意欲にあふれ,日本の歴史と伝統によってつちかわれた国民性を発揮したからである。
このようなたくましさとともに,日本の美しい伝統としては,自然と人間に対するこまやかな愛情や寛容の精神をあげることができる。われわれは,このこまやかな愛情に,さらに広さと深さを与え,寛容の精神の根底に確固たる自主性をもつことによって,たくましく,美しく,おおらかな風格ある日本人となることができるのである。
また,これまで日本人のすぐれた国民性として,勤勉努力の性格,高い知能水準,すぐれた技術的素質などが指摘されてきた。われわれは,これらの特色を再認識し,さらに発展させることによって,狭い国土,貧弱な資源,増大する人口という恵まれない条件のもとにおいても,世界の人々とともに,平和と繁栄の道を歩むことができるであろう。現代は価値体系の変動があり,価値観の混乱があるといわれる。しかし,人間に期待される諸徳性という観点からすれば,現象形態はさまざまに変化するにしても,その本質的な面においては一貫するものが認められるのである。それをよりいっそう明らかにし,あるいはいっそう深めることによって人間をいっそう人間らしい人間にすることが,いわゆる人道主義のねらいである。そしてまた人間歴史の進むべき方向であろう。人間として尊敬に値する人は,職業,地位などの区別を越えて共通のものをもつのである。
(文部省『期待される人間像』)