研究資料分類基準G2-04高等学校社会科「現代社会」の研究-151/170page

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資料5) 仕事と仕事以外のどちらに生きがいを感じるか

資料5) 仕事と仕事以外のどちらに生きがいを感じるか

資料6) 生きがいの四つの基礎条件

1) 極度の貧しさからの解放
ある程度までの貧しさは生きがいの感覚と矛盾しないが,あまり生活に追われていると生きがいは感じられない。それはいわば,生きがい以前の問題といっていいだろう。

2) 未来をもつこと―未来とのかかわりのなかで現在の生が意味づけられること。
老人に「生きがいなし」が多いということは,次の三,四の要因ともかかわりをもつが,もっと直接に,彼らに語るべき未来がとぼしく,生のゆくえが虚無に没していることと無関係ではないだろう。年齢的に若い人でも,未来の感覚を喪失したものが,同時に生きがいを失うというケースを発見することができる。

3) 具体的な人間関係人びととのつながりのなかで自分の生が意味づけられること。
職業をもたない人や,そこに生きがいを見出さない人にも,通常は家庭が生きがいを提供してくれる。一般的にみて未婚や,特に離死別した人に生きがい喪失者が多いということは,種々の調査で明らかになっており,けっして偶然ではないだろう。
結婚したいという希望のほかに,生きがい喪失者の悩みのなかには,相談相手が欲しい,友人が欲しい,子供が欲しい,といった孤独につながるものがきわめて多い。このことは人生の生きがいということが,人とのつながりということとどんなに深くかかわりあっているかということを,裏面から示しているといえよう。

4) 仕事をもつこと「つながり」と「未来」の媒体
統計データにおいて,最もいちじるしい特色は,「無職」のものに,生きがい喪失者がいちじるしく多いということである。ただし同じ無職でも,主婦の場合は,「生きがいなし」という回答がとくに多くはないことをみても,「仕事をもつ」ということは,かならずしも「職業をもつ」ということと同じではない。家事であれ職業であれ,あるいはさらに社会活動や政治運動などであれ,ある集団や社会のなかで一定の役割をもって,「すること」(Work)をもっということであろう。そしてこのことは,「仕事をもつ」ことをとおして,「未来とのかかわりのなかで,現在の生を意味づけられる」と同時に「人びととのつながりのなかで自己の生が意味づけられる」という,生きがいの二つの要請が,具体的に、結合されるからではないだろうか。

(見田宗介「現代の生きがい変わる日本人の人生観」日経新書)


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