学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-063/222page

[検索] [目次] [PDF] [前][次]

生徒1の反応で,かぜのことを言いだしている。このように,急に新しいことに話題が転換していく時に,沈黙が生じやすい。生徒は,自分にとって言いだしにくいことを言いだす準備をしているのである。その準備をし,言ってよいかどうか,決断するために自分の内で考えている時に,沈黙になってあらわれるのである。

だから,生徒1の場合は,自分にとって気になり,重荷に感じていることを言いだす前に沈黙を生じている。生徒は自分の気持ちに直面するのに実は勇気を必要としており,言おうか,言うまいかと,自分の内で迷い,決断するために沈黙が必要だったのである。その決断のあとで語りだす言葉は,大へん貴重な意味をもっていることに気づかなければならない。

そのためには,待つということが何よりの励ましになるのである。もし,こちらがあせって,何かを言いだしたり,質問したりすれば,相手の心の動きをストップさせてしまったり,余計なことを言って,相手の思考を中断させたり,混乱させるかもしれない。だからといって,沈黙は大事だ,待つことがなによりの励ましだということで,こちらの言いたいこともがまんして,イライラを押さえつけているのは,真の意味の待つことにはならない。そこで,相手の沈黙に出あったら,沈黙の意味や相手の気持ちにこちらのピントを合わせてみることである。そのことが待つことになり,そうすれば,こちらもイライラすることが少なくなるのである。

沈黙が続いて,気まずい思いや,緊張感が高まった時などは,

「ずっと黙っているけど,どんなことを考えているのかな?」

と思いきって,相手の気持ちを確かめてみるのもひとつの方法であろう。

沈黙の意味

 ○ 何をどう言ったらよいか,考えている沈黙

 ○ こんなことを言って大丈夫かと,迷っている沈黙 

 ○ 相手の出方を見ようとして待っている沈黙

 ○ 話が一段落して,ほっとして休んでいる場合の沈黙

 ○ 一生懸命,自分の心の働きをおいかけている時の沈黙


[検索] [目次] [PDF] [前][次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。