学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-098/222page

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5.事例 (1)

◆主訴を理解するために ―場面緘黙―

子供たちにとって,学校は,本来楽しいところであり,自分のもてる力を最大限に発揮し,生きがいのある充実した生活ができるところであるはずである。しかし,何らかの情緒障害によって,学校や学級集団へうまく適応できず,自己実現を得られないまま孤立化し,漫然と学校生活を送る子供が見られるのは残念である。

その一つに「緘黙児」があげられる。

これは,家族のものや近所の子供たちとは元気に遊び,普通の子供たちと同じようによくしゃべるのに,学校の門をくぐったとたんに態度が一変し,しゃべらなくなってしまう子供である。このように,学校などの特定の場所(場面)に行くと異常な緊張や不安がおこり,口を閉ざしてしまうものを,特に場面緘黙と呼んでいる。

(1) 緘黙児の分類について

緘黙を原因別にわけると次の三つに分類される。

 1) 器質的な障害によるもの(聴覚神経の異常による先天性ろう,脳炎後遺症や外傷による後天性ろう)

 2) 機能障害によるもの(精神薄弱,自閉症など)

 3) 心理的理由によるもの(心因性緘黙)

このうち,臨床場面で多く問題視されるのは,心因性緘黙であり,これは,心の悩みが原因になっている。これを出現場面で分類すると,全緘黙と場面緘黙の二つにわけられる。全緘黙は,何らかの精神的な打撃や重大な衝撃を受けることによって,全生活場面で無言となっているものをいい,場面緘黙は,例えば,学級内などで,全く,もしくはほとんど発語しないものをいう。

ここでは,場面緘黙に焦点をあて,その原因や子供の特徴,指導のあり方をさぐってみたい。


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