学級担任・H・R・Tのための学校教育相談入門-126/222page
11)〜14) 本 人 ○一人でA市に日帰りの旅行に行ってきたということで,お土産を持産して来所する。
・切符を買う時,バスに乗るとき緊張した。
・自信が少しついたので,今度は別なところに旅行してみたい。
・祖父や弟に暴力をふるっていない。・祖父,母,弟,妹についてのみかたや接し方
・毎日の生活時程
・お手伝いさんに対する接し方
・一人で来所する時の気持ちの変化
○表情や態度におちつきと,ゆとりが感じられるようになる。
(8) 考察
現在,継続カウンセリング中の事例で,登校拒否から家庭内暴力をおこしているケースである。本入のもつ登校不安,肉親に対する不満,能力面で勝る弟への劣等感,愛情欲求への退行等を共感的に受容することから始めた。暴力行為がこの生徒にとって,何を求め,何を意味しているのかを明確にして本人と親へのカウンセリングにあたってきた。段階的にいっさいの登校刺激を絶ち,その中で自分の暴力の意味を考えさせ,相手の立場にたって自分を眺めさせようと努めてきた。
精神的なストレスがうつ損している母に対しては,不満を吐き出させることで精神の安定を図りながら,「小さい時,きちんとしつけてくれなかった母だから嫌いだ」といわせた養育上の問題を考えさせ,現段階でどう接することが問題の解決になるのかを態度化することで本人の変容を待った。
指導経過でみられるように暴力行為は親の接し方と対照して減少している。次の段階としては,耐性を強化し,目的的な生活態度の確立のため,自分の責任で自分の行動を律していける力をつけたいと考えている。TATの検査結果は下表のとおりで,所属欲求,社会領域に高い数値がみられることからも,それらに対する不安除去のため,今後,自律訓練を導入していきたいと考えている。