理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-033/139page
7.鉄と砂鉄の化学
1 ねらい
日常生活で使用されている鉄製品と砂鉄は同じものであると考えている生徒が多い。そこで,鉄製品と砂鉄の性質の違いを実験を通して理解させたい。また,鉄元素の循環を学ばせる。そして,これらの実験を通して化学に対する興味を喚起させるとともに,化学をより身近なものとして把えさせたい。
2 準備
(1)試薬・器具
鉄粉,鉄釘,スチールウール,砂鉄,6M−HCl, 6M−H2SO4, 5%NaCl, 0.1%KSCN, 1%K3[Fe(CN)6], 木炭,耐火レンガ(イソライト),鉄管(外径 1.5cm),足踏みふいご,試験管,ピンセット,6号ゴム栓3個,石英管(外茎 1cm,長さ 30cm)2本,酸素ボンベ,鉛筆,絶縁テープ,電源装置,シャーレ
(2)鉄釘の処理
鉄釘の表面にメッキされている亜鉛をとり除くために,試験管に鉄釘を入れ 6M-HCl を加える。気体の発生が止まったら加熱して表面の鉄を少し溶解させる。次に塩酸を捨て十分に水洗する。実験に使用する鉄釘はすべてこのように処理したものを使用させる。
3 実験
(鉄製品と砂鉄)
〔実験1〕 鉄製品・砂鉄と酸との反応
(1)方法
1)鉄粉を2本の試験管に薬さじ(小)で1〜2杯入れる。1本には塩酸を,他の1本には硫酸を約 10ml 加える。
2)反応後,各々をろ過する。ろ液を2分し,1本には 1%K3〔Fe(CN)6〕 を他の一本には 0.1%KSCN を少量加える。
3)スチールウールについて 1),2)と同じ方法を試みる。
4)鉄釘を2本の試験管に各々2本ずつ入れる。1本には塩酸を,他の1本には硫酸を約 10ml ずつ加え加熱する。つづいて 2)と同じ方法を試みる。
5)砂鉄について 1),2)と同じ方法を試みる。
(2)結果と考察
1)鉄粉は気体を発生して溶解する。不快臭があるので通風のよい所か,屋外で反応させた方がよい。溶解液には Fe2+ が多く含まれる。
2)スチールウールも 1)と同じ現象・結果が得られる。
3)鉄釘は反応が遅い。気体が発生して溶解する。
4)砂鉄は気体を発生しない。硫酸にはほとんど溶解せず塩酸には少し溶け,液は褐色となりFe2+,Fe3+が検出される。