理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-047/139page

[検索] [目次] [PDF] [前][次]


4 結果と考察

(1)胞子密度を大きくすると,前葉体はハート型にならず,シャモジ型になる。しかも,造卵器をつけず,造精器だけの単性前葉体となる。生命現象の不思議さである。

(2)発芽条件と発芽率について
  発芽に光が必要であるか否かを調べるには,アルミ箔で培養基を包み暗黒各件下に1週間置くとよい。一般の胞子は,光がないと発芽しないが,ゼンマイ,スギナなどでは,暗黒下でも発芽する。この実験から,葉緑体をもつ胞子のあることに気づかせることができる。
  培地のちがいによる発芽率の差はないが,胞子の種類,採集した時の条件等により,発芽率,発芽のはやさなどまちまちである。クサソテツ,イヌガンソク,リョウメンシダなどは発芽がはやく,3日位で100%の発芽率を示す。おそいものでも,7日後には70%位の発芽率を示す。

(3)発芽のようす。
  胞子の細胞が水を吸って膨らみ,胞子の膜を破って仮根を生じるが,殻の破れたところがら,内部の緑色の葉緑体らしきものが見える。やがて,仮根の伸びが見られ,これに接した部分が伸長して糸状体をつくるようになる。コケ類では,原糸体ができてから仮根が伸びるが,このちがいが本質的には何によるものかは不明である。
  発芽には,胞子内で2〜3細胞となり殻を破る胞子内発芽と胞子外発芽がある。イヌワラビやハリガネワラビなど大部分のシダは後者である。

(4)仮根の伸長と糸状体(前葉体細胞)の発達方向について
  これには,切線発芽(ウラジロ,ノキシノブ)や遠心発芽(ゼンマイ),求心発芽(ヘゴ,オシダなど多くのシダ類)などの形式があり,種によっては,ほぼ同じように発達する。
  この研究では,培養基の置く場所,向きを一定にしておくことが大切である。水栽培は,水が揺れ動くので,このテーマには不向きである。寒天培地がよい。

(5)横分裂の開始について
  胞子は,たて分裂をして2〜5細胞期(糸状体)になると,よこ分裂(二次元分裂)をはじめる。標準的なものは,4〜5細胞になると,よこ分裂とたて分裂を交互にするようになり,ハート型に成長する。よこ分裂を起こさせる要因は,不明である。ミズゴケ培地では,糸状体が二又に分岐したものが見られる。これには,光が関係ありそうである。また,寒天培地の4〜5細胞の時期に,寒天培地に水を加え糸状体を水没させてやると,糸状体は伸びつづけ,よこ分裂を開始せず,水面上に出てはじめてよこ分裂をしたものが観察されている。一方,水栽培では,2〜3細胞期より,よこ分裂をするものも多く,分裂方向も変化が多い。


[検索] [目次] [PDF] [前][次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。