理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-048/139page

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11.葉と茎の構造の観察

1 ねらい

 植物は種類によってその構造にそれぞれ特徴があり,生育する環境と密接に関連しながら生きている。ここでは植物体の栄養器官である葉と茎について,その一般的な構造を細胞・組織段階で理解させたい。光合成器官としての葉,通道及び支持組織としての茎について,その構造が機能とどのように関連しているかを調べてみる。授業時間内では,準備,時間の制限などでなかなか行われにくいプレパラート作製,描画,写真撮影を,時間をかけて生徒自身の手で行わせたい。材料として準備する植物は,学校及びその周辺で入手できるものをえらび,構造上,例外的なものはなるべく除くようにする。

2 葉の構造を調べる

 材料 ツバキ,マサキ,アオキ,ゲッケイジュ,ヤツデ,カシ,ヒイラギ,チヤなどのやや厚い葉が切片を作るのに適している。マツの葉なども,これに加えておきたい材料である。ゴムノキの葉などは厚いが,多層表皮であり実習には不適当である。
 器具 安全カミソリの刃(両刃)、シリンダーミクロトーム,ハサミ,ピンセット,柄付き針,細筆,シャーレ,時計皿,スポイト,スライドガラス,カバーガラス,ろ紙,ガーゼ,顕微鏡,光源装置
 薬品 FAA液(Formalin-Aceticacid-Alcohol),50%エタノール90+氷酢酸5+局方ホルマリン5,体積比で混合。液量は材料体積の10倍以上。24時間。FAA液をそのまま,保存液として用いることも可能。十分に固定してから,50%エタノールと交換しておくとよい。実習の時期と材料の生育期とがずれる時などの保存に利用する。
60%エタノール……組織中の気泡を抜く時などに利用する。
サフラニン液……サフラニン1g, エタノール50ml と水50ml の混合液にとかしてつくる。木化・コルク化した細胞壁,ペクチン化合物を染色する。耐久性があり,永久プレパラートの染色によい。いろいろな染色液と組合わせて二重染色を行う。
酢酸メチルグリーン液……1%酢酸100ml にメチルグリーン0.5g をとかしてつくる。染色時に細胞の固定も行われ,細胞核の染色に用いられるが,木化した細胞壁が青緑色に染色される。
フロログルシン液と塩酸……2〜3% フロログルシン液に材料をひたし,これに希塩酸を加える。木化した細胞壁を赤く染色する。

3 方法

(1)厚い葉は葉脈を中心に短冊型に切り出し,重ねてもつ。うすい葉は棒状に巻いてもつ,マツの葉は数本をまとめてもつ。軸の方向に正しく直角になるように,カミソリの刃を手前の方に引くようにして切る。斜めに切られた切片ができないように注意する。材料の切り口とカミソリの刃はいつも水で濡らしながら切るようにして,できるだけ薄い切片をつくる。切片は水を入れたシャーレの中に入れておく。薄くて,こわれていない良い切片を数枚えらび,細筆やピンセット,柄付き針などを用いて,こわれないように注意し,60%エタノールを入れたシャーレにひたし,組織内に入った気泡を抜く。固定しておく時は,別のシャーレに移し,FAA液を入れる。薄い切片では10分ぐらいで固定できる。


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