理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-078/139page
6 海岸での生物の観察と調査
1 ねらい
海は人間とのかかわりも大きく,またきびしい環境条件下に適応した多様な生物が生活し,陸上とはちがった生物相がみられる場所である。近くに海がある学校では,観察・調査の対象としてえらび,生物と環境のかかわりあいを中心に継続的な研究をさせたい。
2 海岸植物(砂浜)の調査
準備 河原の植物調査の時と同じ。
方法
(1)海岸の砂浜・丘陵などの地形と,植物の生育状態との関係を全体的に観察し,スケッチしたり写真をとっておく。
(2)汀線付近から内陸部へむかって生育している植物の種類を図鑑などで調べる。
・どの地域に,どんな種類が多く生えているか。
・調査する海岸砂浜の大きさによって,種類とその分布に変化はあるだろうか。
・代表的な海岸植物(ハマボウフウ,コウボウムギ,ハマヒルガオなど)をえらび,掘りおこして調べてみる。根や地下茎のはりかた,長さを測ってみる。葉のでる位置,形,大きさ,かたさ,光沢などを調べる。
(3)海岸(砂浜)植物の植生分布を調査する。
・汀線から内陸部へむかって直角に巻尺をはり,測定の基線とする。巻尺のポイント(間隔は調査海岸の大きさによって決めておく)に1m2の方形枠をおき,出現植物の種類,被度を調べておく。
・砂浜の植生を,砂の移動の状態からいくつかのグループにわけ,各グループごとの枠内に出現する各植物の頻度を求める。どんな植物が広く分布しているかを比較してみる。
考察
(1)海岸植物は内陸部にはない特有種である。種類も限られているのでおぼえやすい。その植生は森林などのような数層にわたる群落はなく,ほとんどが単層群落である。
(2)帯状測定で調べていくと,植生の分布は汀線からの距離や,地形に応じて変化していることがわかる。調査海岸地域の横断面(土地の高低,傾斜,砂の安定度)も調査しておく。
(3)海風,砂の移動,塩分濃度など,海岸はきびしい環境ゆえに他の内陸生の植物の侵入を拒み,特有の植生を保っている。この海岸の環境が人為的に変えられてしまうと,内陸性の植物がたちまち侵入してくる。内陸性の植物の侵入と生育を,そのような環境下の地域で調べておく。
(4)防砂,防風のため,海岸にはいろいろなしくみが施されている。砂の動きをとめる方法やクロマツなどを植えている防風林などもよく観察,調査してみる。