理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-102/139page
(2)化石から古環境を推論する。
生物は環境に適応して生活することを利用して,産出する種類や量からその生物が埋没したころの古環境を考察する。
1)内湾的傾向の度合いを考察する。
いわき市の海岸平野のたい積物に含まれる軟体動物化石について,内湾種と外洋種の含まれる割合を産出全種(1)および優占種(2)別にまとめると図1のようになる。
図1 内湾種(a)と外洋種(b)の比率
(1)産出全種 (2)優占種 上部は上部層 下段は下部層 (湯本高校地学部原図)
図1(1)では上部層および下部層で内湾・外洋種の比率はほぼ等しいが,(2)では上部層たい積は下部層たい積時に比較して外洋的な傾向が強かったことを推論することができる。
2)海水温のようすを考察する。
上例の化石について,同一現生種の水平分布を調べる。それを北緯35度以南,北緯35度以北および双方にわたって分布する種に分類し,その産出比率を求める。その結果は図2のようになる。
図2 化石の生息範囲
a:現生のもの(いわき海岸)
b:上部層
c:下部層
図2によれば,上部層のたい積期は,現在より水温はやや高く,下部層たい積期はやや低かったと考えることができる。
〔付記〕
上例のような化石群集を用いて古環境を推論する方法のほか,環境に伴う個体変異(たとえばホタテの放射助の数と水温など)のようすを利用して古環境を推論することもできる。
図3 ホタテの放射肋数別の出現率
浜通りの鮮新世の地層から産出したホタテについて計測したものであり,この地層のたい積地は寒流の最南端部あたりに位置していたと考えられる。