理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-101/139page

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14 化石から古環境を推論する

1 ねらい

 化石の種類やその数から,それが埋没したころの生物相や古環境を推論する。

2 準備

 ある地点から採集された化石またはそのリスト(化石は新しい時代のものほど扱いやすい),化石図鑑,動・植物図鑑など。

3 実習

(1)生物が遺骸を残す割り合いを海岸に生息する生物と残された遺骸のようすから考察する。
 ・海岸付近に生息する生物の種類を調べる。
 ・その海岸付近の陸上(波打ち際付近)および海底でみられる遺骸の種類を調べる。
 ・岩礁性の貝類の遺骸が岩礁からの距離によって,その数がどう変化するかを調べる。

(2)化石の種類から,古環境を観察する。
 ・採集した貝化石を内湾および外洋の特徴種に分け,その比率から古環境を考察する。
 ・採集した貝化石の同一現生種について水平分布を調べ,化石層形成時の水温のようすを考察する。

4 結果と考察

(1)生物が遺骸を残す割り合い
 いわき市北部海岸の岩礁地帯(潮上帯〜潮間帯)で,そこに生息する生物の種数と,そのうち死後分解によって肉眼的には消滅する種を差引いた種数(遺骸残存種数)および,この付近の海岸,海底でみられた遺骸の種類は,表1のようになる。
 この付近では140種ほどの生物が観察されたが,死後に腐敗などから,その体の一部がまぬがれるものは58種(41%)で,実際にこの付近で遺骸が確認されたものは29種(21%)であり生物の多くが,死後すみやかに分解してしまうことが理解される。
 この分解をまぬがれた遺骸は,運搬の過程でさらに消滅するものがでてくることは,岩礁性の貝類の遺骸が,岩礁から離れた地点でみつかるものほど破損度が高いことから理解できる。
 このように運搬の過程で消滅した残りのうち続成作用の過程で,また消滅していくので化石として残るものの割合は非常に少なくなることが理解できる。

表1 いわき市北部海岸の海接生物種と残存種
種類 現生種数 残存種数 海岸・海底にあった遺骸種数
脊椎動物 8 8 1
軟体〃 32 32 21
節足〃 15 12 4
棘皮〃 6 6 3
原索〃 2 0 0
その他〃 27 3 0
植物 51 0 0


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